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新春経済講演会・新春賀詞交歓会特別講演収録 「木材新世紀」を迎え進化を遂げる住まいづくりで パートナーの皆様とともに躍動する1年に!

 東京オリンピック・パラリンピックのメーン会場となる新国立競技場をはじめ、世界中の建築物でも木がふんだんに使われ、時代はまさに「木材新世紀」を迎えています。世界の経済や情勢などにより波乱の幕開けとなった2016年は、消費再増税とその後の需要の崖を見越した舵取りが求められます。今回は新春経済講演会および新春賀詞交歓会でのナイス㈱平田恒一郎社長の講演内容をまとめました。

 

様々なリスク要因の芽が噴出した年初
 

 2016年の世界経済は波乱の幕開けとなりました。年初には2017年4月の消費増税前の駆け込み需要もあり、これから1年3カ月は景気は堅調と考えていました。しかし、東京株式市場は大発会から1950年9月以来初となる6営業日連続の下落、1月21日には終値16,017円26銭となるなど1年3カ月ぶりの安値水準となりました。ニューヨーク株式市場も、1月20日のダウ平均株価は終値15,766ドルと昨年8月25日以来の安値をつけました。
こうした世界的な株価下落の背景には、中国株の急落と原油価格の大幅下落があります。
昨年の中国経済はGDP成長率6.9%と25年ぶりの低水準でした。デフレ圧力が強く、また「鉄道貨物輸送量」「銀行融資残高」「電力消費」をベースとする中国の経済指標「李克強指数」も悪化しています。中国バブルの崩壊かとも言われており、上海株式市場では株式と人民元の連鎖安が止まりません。中国政府は株式市場の相場急変時に売買を停止する「サーキットブレーカー」制度を1月4日に導入しましたが、同日および7日に相次いで発動、8日には同制度を停止するなど、中国市場は混乱の様相を呈しました。
また、アメリカの利上げによるドル高期待などにより原油価格は下げ止まらず、1月20日の終値では1バレル26.55ドルと約12年8カ月ぶりの安値となりました。これは、史上最高値となった2008年7月11日の終値145.3ドルの5分の1以下の価格です。
世界情勢を見ても、1月6日に北朝鮮が水爆実験を行ったと発表したほか、過激派組織「イスラム国」が昨年11月のフランス・パリに続き1月12日にトルコ・イスタンブールで、14日にはインドネシア・ジャカルタで相次いでテロを起こすなど、年初から緊迫の状況が続いています。
このように、2016年は様々なリスク要因が顕在化した幕開けとなりました。

 

日本経済 今後1年半は明るい見通し
 

 消費税率10%への引き上げについては、いったん延期させ、参議院と衆議院のダブル選挙でその可否を問うべきとの声も上がっているようです。しかし景気が悪化した際に増税を停止するという「景気条項」は昨年3月に消費税増税法の付則から削除され、食料品全般などを対象とした軽減税率の導入も政府は何とか実現させています。こうしたことから、消費増税は予定通り来年4月に実行されるとの見方が強いようです。
第一生命研究所の主席エコノミストである永濱利廣氏は、著書『日本経済黄金期前夜』の中で「原油価格の暴落」「大幅の金融緩和」「数年後に控える消費増税」など、現在の日本の経済環境はバブル前の1986年の状況に酷似していると指摘しています。このほかにも4年後に迫る東京オリンピック・パラリンピックの開催や法人税率の引き下げなど、良い材料は様々あります。こうした点から、少なくとも消費増税が実行されるまでは、日本経済は明るいと考えられるのではないでしょうか。

 

勝ち残りに向けた業態多角化を強力サポート
 

 昨年9月、安倍晋三首相は「新三本の矢」を打ち出しました。そして、「一億総活躍社会」を実現するために設置された「一億総活躍国民会議」でも緊急対策の経済分野として、エネルギー性能に優れた木造住宅に対する補助などが検討されました。いつの時代も住宅は内需拡大の大きな柱なのです。
一方で、国土交通省が発表している公共工事設計労務単価を見ると、大工や型枠工をはじめ職人の労務単価はどんどん上がっています。土地価格も上昇を続け、それに伴い住宅価格も上がりつつあり、建築業界はすでにインフレ時代に突入しています。こうした状況下で、発注者有利の値下げ交渉によって成り立っていたデフレ期の低価格型ビルダーのビジネスモデルは、もはや崩壊しているのではないかと思われます。
こうした中、銭屋材木店という材木屋をおおもとのルーツとするナイスグループとしましては、引き続き販売店様とともに力を合わせ、「すてきナイス連合」として一体となって取り組んでいきたいと考えています。
「お客様の『絶対的信頼』に応えることを第一の目的とします」というナイスグループの社是の一文はもともと、「お客様」の部分が「荷主様と買い方様」でした。この創業の精神は今でもナイスグループの姿勢として大切にしています。そうした思いからナイスグループは、様々な仕組みやメニューを継続的に開発し、販売店様や工務店様に積極的にご提供させていただいています。
1月1日号のナイスビジネスレポートにおいて、ナイスパートナー会連合会の役員の方々による座談会を行いました。各社様それぞれに業態を変化させ多角化されており、いろいろなことに取り組まれていることがよく分かります。インフレ時期を迎え、加えて新設住宅着工戸数が大きく減少し「2分の1」経済へと縮小していく中、従来のままの事業では先細りになっていくのは目に見えています。ニーチェの言うように「脱皮できない蛇は死ぬ」のであり、私たちはイノベーションによってビジネスモデルを変えていく必要があります。
ナイスグループは、最高等級品質でありながらグッドプライスを実現した「パワーホーム」を開発しました。パワーホームは、基本性能が大変優れているため、ほんの少しの工夫で未来型住宅であるゼロ・エネルギー住宅(ZEH)やLCCM(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス)住宅を実現できる画期的な住宅です。パワーホーム、およびそれをベースに開発した復興応援型住宅「フェニーチェホーム」は、林野庁の後援により昨年創設され、隈研吾氏らが審査委員を務める「ウッドデザイン賞(新・木づかい顕彰)」において、「ウッドデザイン賞2015」を受賞いたしました。
この住宅商品に共感してくださった全国の企業様とそれぞれ合弁会社を設立し、各地の気候・風土に合わせた商品開発を行ったうえで、青森県、大阪府、愛媛県、香川県、沖縄県においてパワーホーム事業を進めています。今後も全国の販売店様とともに各地に合弁会社を設立し、地元の工務店様が元気になれるような仕組みを構築していきたいと強く考えています。

 

販売店様を通じた工務店様へのお役立ち
 

 国が進める様々な事業や新制度にも積極的に取り組んでいくことが重要です。2015年度事業である「地域型住宅グリーン化事業」では700を超えるグループが採択されました。ナイスグループでは、同事業に取り組まれる取引先様に対し最大限のお役立ちを図るべくナイスサポートシステムをフル活用したパッケージシステムをご用意し、グループオリジナルのパンフレットやホームページ、お施主様向けの提案ツールの製作などを行っています。

 

 

 改正省エネ基準(平成25年省エネ基準)の適合が住宅についても2020年までに義務化される予定です。これにより、空調設備や換気設備、照明設備、給湯設備で消費されるエネルギー量(一次エネルギー消費量)の基準が設けられたほか、外皮性能を算出する計算式が変更されています。これらの計算は非常に煩雑で込み入っていますが、今後も家づくりに携わっていく限り改正省エネ基準への対応は必須となります。
そこで皆さんにぜひご活用いただきたいのが、昨年よりナイスサポートシステムでご提供を開始した新メニュー「平成25年省エネ基準計算書作成システム」です。これは、工務店様に代わって煩雑な計算および書類作成を代行するサービスです。このほかにも、日本最大級の32,000に及ぶデータベースの中から間口や奥行き、玄関の方角など様々な条件に沿ったご希望の間取りを検索できるサービス「プラン検索システム」、ホームページの作成と運用を無料で行うサービスなど、様々なメニューをご用意しています。全国の拠点におけるワンストップサービス体制のもとで、工務店様の業務を販売店様とともに多角的にお手伝いしてまいります。
 
 
 
「住まいの構造改革」キャンペーンが高い評価
 

 阪神・淡路大震災での悲劇を二度と繰り返してはならないという強い使命感から「住まいの構造改革」を進めてまいりました。皆様とともに精力的に取り組んできたこの活動は、昨年(一社)レジリエンスジャパン推進協議会が創設した「ジャパン・レジリエンス・アワード2015」の優良賞を受賞しました。また、エンドユーザーに対して木造住宅の耐震化を訴え続けている「住まいの耐震博覧会」は同賞の最優秀レジリエンス賞を受賞しました。
東日本大震災において宮城県多賀城市にある物流センターが甚大な被害に遭ったナイスグループは、同じ被災者として全力で被災地の復旧・復興に取り組みました。地元企業様と力を合わせ、「甦ろう東北!」を合言葉に、1,088戸の応急仮設住宅の建設に携わりました。さらに、地元企業様とそれぞれ合弁会社を設立し「羽ばたこう東北!」の合言葉のもと、岩手県では宮古市や大槌町、宮城県では気仙沼市や石巻市、仙台市、名取市、岩沼市、福島県では福島市や郡山市、いわき市において被災者の住宅再建に向けた復興応援型住宅「フェニーチェホーム」の供給を行っています。このほか災害公営住宅の建築にも地元企業様と手を組んで積極的に取り組んでおり、東日本大震災の被災者に対する生活再建活動についても「ジャパン・レジリエンス・アワード2015」で優良賞をいただきました。
皆さんと共通理念を持って取り組んできたこれらの活動が高く評価されたことを大変うれしく思います。同時に、今後30年以内に首都直下地震と南海トラフ巨大地震のいずれかが起こる確率が91%にも及ぶ中、命を守る家づくりをより一層強力に進めていきたいと考えています。

 

「木材新世紀」は私たち連合軍が先導する
 

 木材新時代が到来しました。日本の森林は約8秒で住宅1棟分の蓄積が増加しており、木材は日本が世界に誇る豊潤な資源なのです。2010年の公共建築物等木材利用促進法の施行以降、建築物はもちろん、列車の内装などにも木材がふんだんに使用されるようになりました。
新国立競技場のデザインは、国産材を中心に木材を多用した大変素晴らしいものです。19世紀が鉄の時代、20世紀が化学の時代であったのに対し、コンペで選ばれた隈研吾氏は、木材は最先端な材であり「21世紀は木の世紀」だとお話しされています。21世紀の住宅業界は私たち木材業界が大きく先導していかなければならない時代なのです。
木の素晴らしさや価値を再発見させる製品や取り組みについて、特に優れたものを表彰する「ウッドデザイン賞(新・木づかい顕彰)」において、ナイスグループとしては「木を使う住まいづくり」のあらゆる情報を広く提供している点が高く評価され、「住まいの耐震博覧会」が「ウッドデザイン賞2015」のライフスタイルデザイン部門の優秀賞である林野庁長官賞を受賞しました。
今年からは、エンドユーザーに木の素晴らしさを訴え一層国産材の利活用が進むよう、従来の「住まいの耐震博覧会」における木材ブースの内容を更にバージョンアップさせ、「木と住まいの大博覧会」として独立させました。林野庁の後援のもと全国5カ所で開催していく予定です。ぜひご覧いただきたいと思います。
木材市場を日本で唯一全国展開しているナイスグループでは、全国の優良製材メーカー様とともに良質な国産材の安定供給に寄与すべく「素適木材倶楽部」を運営しています。同倶楽部の連携と、全国16カ所の弊社木材市場のネットワークにより「多産地連携システム」を構築しています。こうした取り組みが「価値を産みだす木材流通」として評価され、「ウッドデザイン賞2015」を受賞いたしました。
木材に対する関心が高まっているのは日本だけではありません。レンガや石の文化と言われるヨーロッパにおいても木造建築物には大きな注目を集めています。昨年開催されたミラノ国際博覧会では、1番の人気を誇った日本館をはじめ、ベルギーやウルグアイ、ポーランド、マレーシア、トルコなど実に多くの国のパビリオンで木がふんだんに利用されました。そして、テーマ館である「パビリオン・ゼロ」や会場内の飲食店や休憩スペースなど多くの場所が木で埋めつくされました。

 

 

「パワーホーム」の海外ブランド「SUTEKIHOME」も木造住宅として高く評価されており、すでにヨーロッパ各地で建築が進んでいます。また、17,000坪の広大な敷地を持つ釜山新港総合物流センターでは、日本からアジアへの木材輸出を視野に入れた日本産材の内覧会を開催しました。韓国では特にヒノキが人気であり、想定を上回る数の現地の建築関係者にご参加いただきました。
このように木材に対する関心が高まる一方で、中・大規模の木造建築物に対するノウハウが業界で不足しているのが実態です。ナイスグループは、非戸建木造建築物に取り組まれる販売店様や工務店様、設計事務所様へのサポート体制を充実させるべく、木構造建築センター㈱や(一財)木構造建築研究所を設立したほか、昨年にはナイス㈱に建設事業本部を創設しました。これまでに保育施設や老人ホームなどに取り組んできました。そして新たに、神奈川県鎌倉市にある学校法人栄光学園の70周年事業として、隈研吾氏が監修、㈱日本設計が設計し、施工を大成建設㈱が行う校舎の木造化事業に、ナイスグループは構造躯体の建築施工として携わることが決定しています。
中・大規模の非戸建木造建築物のノウハウを蓄積し、「木造ゼネコン○R」として木造建築の普及に貢献していきたいと考えています。

 
 
 
「耐震」と並ぶ重要キーワードは「健康」
 

 現在、現行の断熱性能を満たす住宅は5%しかありません。急激な温度変化により失神するなどして入浴中に死亡するケースが10年間で7割も増えています。家の中の事故で亡くなる人の数は交通事故で亡くなる方の3倍にも及び、耐震性能と同じくらい、断熱性能の向上は日本の住宅市場における喫緊の課題となっています。
こうした考えから、ナイスグループでは横浜市および慶應義塾大学と共同で、横浜市鶴見区に「スマートウェルネス体感パビリオン」を昨年10月にオープンしました。ここでは、真冬の気温を再現した装置の中に断熱性能が異なる2つの居室を設け、室内環境の違いによる快適性やエネルギー消費量の違いなどを学ぶことができます。また、内装木質化によって睡眠の質や日中の知的生産性に及ぼす影響など、慶應義塾大学と共同でスマートウェルネス住宅に関連する様々な実証実験を行い、エビデンスの取得に貢献していきます。
質の高い住宅を普及していくことは、住まわれる方の健康を維持・増進するとともに、日本の住宅の未来に貢献することにもつながります。今後は、「耐震」とともに「健康」をキーワードとした住まいづくりに向けて、皆様とともに取り組んでいきたいと思います。
1964年の東京オリンピックの翌年には「昭和40年不況」が到来しました。同様に、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催後には「2020年の崖」が待っているのではないかと危惧する声も聞かれます。しかし、この「崖」がどれほど深いものであろうと、私たち連合軍としては皆が必ず勝ち残る必要があると考えています。
こうした中、ナイスグループでは、販売店様や工務店様に対する様々なお役立ち機能をさらに充実させ、引き続き皆様とともに住宅業界・木材業界の発展のために率先して全力で取り組んでいきたいと考えています。本年もご支援およびご指導のほど、よろしくお願いいたします。