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新春特別座談会 2016年の住宅産業界の展望

 昨年の日本経済は一時足踏みの様相を呈したものの、経済財政政策が一定の効果をもたらし本格的な景気回復に対する期待が高まりました。今年は、消費税率再引き上げに向けた対応と併せ、地方創生や国土強靭化、人口減少社会への対応といった中長期的な視点での事業基盤の強化が求められます。今回は、新春特別座談会としてナイスパートナー会連合会の役員をお迎えし、今後の住宅業界の展望と各社の取り組みをお届けします。

 

非住宅やリフォームが活況呈した2015年
 

平田 新年明けましておめでとうございます。さて、 昨年の日本経済は期待通りの景気回復とはいきませんでしたが、住宅業界では持ち家の着工戸数が対前年同月比で連続増加となるなど、消費増税の反動減から持ち直しの機運が高まりました。2015年を振り返り、皆さんはどのような1年でしたか。
後藤 昨年は、消費増税の反動減の影響から抜け出した4月以降、前年比を上回る受注ペースで推移しました。住宅の受注に関してはとりわけ好調というわけではありませんでしたが、本格的に取り組みを始めた非住宅の中規模物件の受注が伸びています。意匠設計や構造計算の段階から積極的に関与したことで、一定数の受注を獲得することができています。
2010年の公共建築物等木材利用促進法の施行以降、当社が営業の拠点とする岐阜県周辺でも木造建築物のニーズが格段に高まってきたと感じています。内装木質化も含め、木材の需要喚起のための一大チャンスが到来しています。
髙橋 東日本大震災からの復興需要が続く東北地方ですが、当社の活動拠点となる宮城県の内陸エリアにおいては、沿岸エリアに比べると早く復興が始まったことからすでに落ち着き、住宅、建築資材の受注ともに震災前の水準に戻ったという印象です。また、郊外では人口や世帯減少の影響を受け、主にアパートなどの賃貸住宅を中心として家余りの状況も見られます。
そのような状況においても、全国展開する大手住宅会社などは依然として次々と東北地方に進出しています。このことから、決して所得水準が高いとは言えないエリアにもかかわらず、一定の需要があることが伺えます。市場全体としては家余りの状態であるものの、安全・安心・快適で魅力ある住宅に対する消費者のニーズは存在していると言えます。
髙木  当社は、消費増税の反動減で2014年は受注が1割程度落ち込みましたが、昨年は回復しました。かねてより当社では、長期優良住宅や低炭素住宅、ゼロ・エネルギー住宅など工務店様の高品質な住宅づくりをサポートしてきています。昨年は特に、地域型住宅グリーン化事業への取り組みによって組成した団体の工務店様同士のコミュニケーションが密になるなど、工務店様の意識や取り組みレベルが格段に向上してきていると感じています。お客様の家づくりに一緒になって取り組むパートナーとして、情報共有とコミュニケーションの重要性を改めて実感しています。
平方 昨年の当社プレカット工場の加工坪数は前年とほぼ同じ水準でした。しかしその内訳を見ると、一戸建住宅の物件数が減少したのに対し、非住宅の物件数が増加しています。特に8月以降、店舗やサービス付き高齢者住宅、病院といった民間の中規模建築物の引き合いが強かったという印象です。当社では、2年前に中・大規模建築物のプレカット加工に対応するため特殊加工機を導入しており、これが功を奏しおかげ様で多くの受注をいただいています。
当社が拠点を構える群馬県をはじめとして、北関東における住宅市場には多くの住宅会社が進出してきています。将来的に新設住宅着工戸数の減少が予想される中で、プレーヤーの数は増加している状況です。こういった状況において、ジャストインタイムの納材や高齢者対応の家づくりなど、工務店様や消費者が必要とする機能やサービスに対しては、まだまだお役立ちを追求する余地があると考えています。
沼田 当社の昨年の売り上げは、前年比10%程度の改善となりました。東京23区内という特殊な地域のため、マンションのリノベーションやリフォームの需要が大変多く、特に単身者や子供のいない夫婦などを中心に、中古のマンションを購入してリノベーションするというニーズの高まりを感じています。当社としては、この需要をある程度取り込めたことが貢献しました。
マンションのリノベーションは、従来の一戸建住宅の新築やリフォームとは異なるノウハウが求められます。例えば、マンションリフォームで垂木を20束搬入する必要がある場合、エレベーターに入れるためにはカットする必要があります。しかし、マンションの下でカットするとほこりや騒音が出てしまうため、当社では製材工場であらかじめカットして納材します。地の利や機動性を生かし、マンションのリノベーションに特化することで差別化につながっていると感じています。
児玉 昨年の前半までは、やはり消費増税の反動減の影響が長引いていましたが、夏以降は次第に回復してきました。当社ではこれまであまり扱ってこなかった木材以外の基礎資材などの取り組みを始めたところ想定以上の反響をいただくことができました。
当社もリフォームやリノベーションのニーズの対応に力を入れています。内装の施工も手掛けることで底堅い需要があり、愛知県内だけでなく三重県などからもお引き合いをいただいています。
福井 当社においても、消費増税の反動減の影響は昨年の夏ごろまで続きましたが、それ以降の売り上げは回復傾向で推移しています。背景には、新築住宅の復調に加えて工事部門の伸びがあります。公共工事や民間の大型物件も増え、構造躯体の建て方だけでなく壁やクロス、天井などといった内外装工事も含めて受注できていることが大きいと感じています。工事部門の取り組みを始めたのは40年ほど前ですが、今では全体の売り上げの6割を占めるまでになっています。
杉田 当社グループでは、「ナイスサポートシステム」により、32,000もの間取りデータベースからご希望に沿ったプランを検索して活用できるシステムや無料のホームページ作成サービスといった工務店様の受注サポートをはじめ、省エネ基準適合のための外皮平均熱貫流率や一次エネルギー消費量の計算、推奨パッケージ商品から選択するだけで簡単に認定低炭素住宅がつくれる標準仕様書作成サポートなど様々なメニューでお役立ちを図っています。

 

 

2016年の見通しと消費の動向
 

平田 2016年の展望をお聞かせください。
髙木 消費税率再引き上げの駆け込み需要により、今年は着工戸数が1割もしくはそれ以上伸びると見ています。ただ、注文住宅と分譲住宅では景気の影響の受けやすさが異なるという分析があります。過去数十年間のデータを見ると、注文住宅の着工戸数は概ね前年比-20%から+20%の範囲で変動しているのに対し、分譲住宅では-40%から+40%の範囲で変動しています。しかし、過去2回の消費増税後に限っては、分譲住宅は1割程度の落ち込みであった反面、注文住宅は2割~3割減と、むしろ注文住宅の方が大きく影響を受けていました。
これを踏まえると、注文住宅への納材が今年はぐっと増える反面、増税後は反動減が来るため、難しい舵取りが迫られると思います。単に需要が盛り上がるのを手放しで眺めるのではなく、収益の中身やお客様の構成をしっかりと見極める必要があると考えています。
児玉 2027年に予定されているリニア中央新幹線の開業を見据え、名古屋駅周辺では大規模な再開発構想が進められています。これに伴い、現在新たな高層ビルがいくつも竣工し、活況を見せています。今年も、名古屋市の中心地ではコインパーキングが撤去されマンションが建設されるという状況が継続すると見ています。駐車場代も、名古屋駅付近でこれまで1カ月5万円程度だったものが7万5千円程度にまで高騰するなど、東京に匹敵する水準となっています。
この活気を住宅業界に呼び込む必要があります。都市部では特に、地価の上昇によりビルやマンションなど高層化の進行が顕著です。活況な名古屋圏の景気の波に乗るためにマンションや店舗、事務所の内装などといった分野でしっかりと需要を取り込める体制を考えています。
沼田 リフォームやリノベーション需要は、消費増税に伴う駆け込みで大幅に増加すると見ています。異業種から新たにリフォームに参入した事業者でも多くの受注を抱えているようです。
子育てを終えた世代は、上下移動の多い一戸建住宅から、フラットなマンションへ移り住む方が多くなっています。そのような背景から、マンションリフォームでは和室回帰の傾向が見られます。フローリングにベッドを置くのではなく、畳に布団を敷いて寝たいというニーズが増えているようです。部屋を和室調にし、床の間を設けたいといったニーズもあります。
平田 当社グループでもマンションリノベーションに取り組んでいます。昨年はリナイス㈱を設立し、これまで培った資材調達力や中古流通事業における情報力、ナイスユニテック㈱やナイスリフォームプラザ㈱の施工力、賃貸住宅市場における情報力などをフル活用し、中古マンションを1戸単位で取得し、良質な内装・設備へとリノベーションしバリューアップを図ったうえで再販しています。今後はさらに当社の強みである木材をふんだんに活用したバリアフリーリフォームにも積極的に取り組んでいきます。

 

 

「木材新時代」が本格幕開け
 

平田 昨年、イタリアのミラノ国際博覧会を視察しました。日本館をはじめ多くの建築物で木がふんだんに用いられており、こだわりの意匠と相まって多くの注目を集めていました。レンガや石の組積造(そせきぞう)の文化と言われているヨーロッパでも建築物の木造化へとシフトしつつあります。やっと私たちの時代、木材の時代が来たことを実感しました。  一方で、森林大国の日本でも、まだまだ木を使うべきところに使いきれておらす、私たちが先陣を切ってさらに需要を開拓するべきだと考えています。「木材新時代」における皆様の取り組みをお聞かせください。
平方 当社では、地域材を用いた良質な木造住宅づくりを担う工務店様のお役に立てるよう、資材販売に加えて、設計積算からプレカット加工、納材、施工に至るまで機能を充実させ、ワンストップソリューションの実現を目指しています。中規模建築物などの非住宅に関しても、木材加工や納材だけでなく設計や施工機能を充実させていく方針です。
また、省エネ基準の改正や高度省エネ型住宅の普及に伴って求められる家づくりが高度化する中、設計や営業に関して工務店様の現場力を強化するためのセミナーや勉強会を定期的に行っています。
後藤 当社では、今後の公共建築物や民間非住宅建築物の木造化ニーズの更なる高まりを見越し、大規模建築物の工事機能を強化します。加えて、現在はスギやヒノキを圧縮して密度を高める加工技術を生かし、内装材をオリジナルで開発し供給しています。単なる資材の流通機能だけでなくメーカーとしての機能を持つことで、自治体や設計事務所などへの非住宅建築物の営業力強化にもつなげています。
福井 今後は中・大規模建築物の木造化が大きなカギになると考えています。しかし、木造の場合、構造設計に関するノウハウが十分に浸透していないのが実態です。図面を検討した結果、最終的に鉄骨造になってしまうという事例も見られます。業界をあげて木造についての知識を共有化し、高めていくことが必要だと思います。
さらに、公共建築等木材利用促進法の施行を受けて木材の需要は高まっていますが、県産材や市産材など行政が求めることと現実の間には乖離が存在しています。対象を限定しすぎると木材の供給量が間に合わないといった問題がますます深刻になってくると見ています。「地域材」や「九州産材」など大きな枠でとらえることで、より活況で取り組みやすくなると考えています。
児玉 当社では、ナイスさんも積極的に関わって推進している木曽川流域木と水の循環システム協議会に加盟しています。当社の拠点である名古屋都市圏は500万人以上の人口を抱える一大消費地ですが、例えば愛知県産材のみでこのエリアの需要をまかなうことは困難です。そこで、良質で豊富な木材の一大産地である木曽川の上流域までを一つの経済交流圏として設定し、「流域材」という木材の新しい地産地消のブランドを構築し推進しています。
後藤 私は岐阜県木材協同組合連合会の会長を務めていますが、ウッドファースト社会の実現を目指し、(一社)全国木材組合連合会や全国森林組合連合会は奮闘しています。国も様々な面で補助金を打ち出しており、日本産木材の取り扱い量は増加していくと見ています。
しかし、まだまだ外国産材と比較した場合のコスト面のハードルがあります。山林からの伐採や搬出の費用を下げる必要があり、これが大きな課題となっています。建築職人の不足と同様に、木の伐採などを行う林業従事者も減少しています。林業の効率化を推進するため、大きな機械が入れるような山林の整備を行い、省力化によって出材コストを下げ、価格・供給・品質の安定した木材供給を実現していくことが重要です。
髙橋 当社グループでは現在、宮城県加美町に製材工場の建設を進めており、今年4月の稼働を目指しています。地元の大崎市周辺で産出するスギを「大崎杉」として製材・供給していく計画です。製材事業に乗り出した背景としては、環境意識への高まりから木材への注目が高まっていることや、自治体による非住宅建築物への地元産材活用のニーズが高まっていることがあります。
現在、宮城県内で大規模な高齢者福祉施設を木造で建設する計画が立てられているのですが、特殊材やトラス構造を用いた構造の設計や構造計算、プレカット加工技術を生かし、地元産材を活用した建築物を積極的に推進していきます。
杉田 木材需要の拡大に向けては、いかに木造非住宅市場を盛り上げていくか、そして木造の知見を集め担い手をどのように増やしていくかが今後の重要な課題だと考えています。
当社では、昨年新たに建設事業本部を立ち上げ、木造建築物の意匠設計から構造設計、資材調達からプレカット加工、施工に至るあらゆる面においてワンストップでサポートしています。ぜひご活用いただき、皆様と一緒になって木造非住宅市場の活性化を進めていきたいと思います。

 

住宅業界に課された課題と展望
 

平田 今後、本格的な人口減少や世帯減少、そして超高齢化や労働力不足が予測される中、5年後、10年後を見据えて住宅業界の抱える課題やそれを踏まえた展望などをお聞かせください。
沼田 新設住宅着工戸数は今後確実に減少し、材木店や資材販売店をめぐる環境は厳しさを増していきます。東京都大田区の当社周辺のエリアでは、20年前に45軒あった材木店は昨年8軒となり、今年ついに4軒となる見込みです。市場の縮小で同業社間での競争も激化し、リフォーム市場などでは異業種からの参入も進んでいます。しかし、実際にリフォームを検討される消費者に接すると、やはり地元密着で地域に根差した事業者に対する安心感が大きいと感じます。
福井 現在のペースでは、10年後には深刻な職人不足に陥ってしまうのではないかと考えています。当社は職人の確保を最優先課題として取り組んでおり、職人を自社で採用し始めています。大工職人や左官職人が不足する中、職人の確保による内製化を行い、納材と施工を併せて受注を獲得していきます。また、今後は若手の職人の育成も課題となってきます。
髙木 工務店様の仕事を請け負う棟梁は、工務店様と仕事の考え方を共有する必要があります。プレカット加工が主流になる以前は、材木店は職人と強い接点がありましたが、プレカット加工が普及したことで、大工との接点が大きく減少してしまいました。
この関係をもう一度強化して職人を確保するため、私たち流通業者と10~20社の工務店様とで連携し、職人を教育・育成し、全体で職人を共有するシステムを構築したいと考えています。販売店と工務店様、職人が一緒になって若手を育てることで、将来の人材を確保し、技術を継承していきたいと思います。
平方 当社は、「木材の良さを広め、命と健康を守る住まいづくりを推進する」という企業理念を掲げています。ぐんま健康・省エネ住宅推進協議会の事務局を務めるなど、業界だけでなく一般消費者に対しても、住むことで健康寿命の延伸に寄与するとされるスマートウェルネス住宅の普及・促進を行っています。
また、地元の一般消費者を対象に、森林や製材工場、プレカット工場を見学するツアーを開催し、国産材活用の意義や木造住宅の魅力などについて普及・啓発を行っています。
これらの活動は一朝一夕には業績には貢献しませんが、健康で快適な生活を実現するという住宅業界の責務として、長期的な視点で取り組んでいます。
髙橋 住宅業界に限らず、どのような分野においても重要なのはノウハウではなく人材だと考えています。ノウハウは、あくまで特定の分野で特定の時期にマッチする知識やスキルです。時代や環境が変化すれば、当然それまでのノウハウは通用しなくなってしまいます。
普遍的に重要なことは、環境の変化や時代を敏感に感じ取り、的確に舵取りを行うことができる人材を育てることです。そのためには、若いうちから積極的に事業を任せ、自主性を持って取り組んでもらうことが必要です。こうした考えから、当社は昨年創業60周年を迎えたことを機に私は社長を退き、若い世代へとバトンを引き継ぐこととしました。
後藤 労働力不足や人材不足が叫ばれる中、これからの経営はいかに社員を育てていくかにかかっていると思います。「良い人」を育てることは、「良い人」を集めることにもなり、「良い人」が集まれば「良い会社」になります。良い会社には多くの人が集まるので、心配しなくても数の確保ができると考えています。
「ヒト・モノ・カネ」という時代がありましたが、現在は「ヒト・ヒト・ヒト」という時代ではないでしょうか。
平田 当社グループは、「住まいは命を守るもの」をスローガンに、地震に強い家づくりに取り組んできました。昨年からはこれに加え、環境と健康に優しい家づくりのため「スマートウェルネス住宅」の普及・啓発に取り組むとともに、地球環境や地域経済の活性化に貢献する木造建築や地域材の利活用にもより積極的に取り組んできました。
今後も引き続き、「お客様の素適な住まいづくりを心を込めて応援する企業を目指します」という企業理念のもと、販売店様や工務店様、メーカー様と一体となり、住まい手を幸せにする良質な木造住宅の供給に邁進していきたいと思います。
本日は貴重なお話をありがとうございました。本年もどうぞよろしくお願い致します。