現在位置:
HOME > 木材・建材販売について > 情報誌「ナイスビジネスレポート」 > 2018年(平成30年) > 10/01号 > 編集部レポート 既存不適格なブロック塀の転換を促進
ナイスビジネスレポート

編集部レポート
既存不適格なブロック塀の転換を促進

 大阪府北部を震源とする地震による既存不適格のブロック塀の倒壊を契機として、危険なブロック塀を撤去・改修する事例が増加しています。国土交通省は2019年度の概算要求においてブロック塀対策の支援を盛り込むほか、東京都を中心として全国知事会においてブロック塀の木製フェンスへの転換が議論されるなど、ブロック塀に対する安全性の点検と改修への意識が高まりを見せています。

大阪府北部地震でブロック塀が倒壊

 本年6月18日に発生した大阪府北部を震源とした地震により、大阪市北区をはじめ高槻市、茨木市、箕面市、牧方市で震度6弱の激しい揺れを観測しました。2府5県で人的被害は死者5名、重軽傷者454人に上り、住宅被害は全壊16棟、半壊472棟、一部破損が53,751棟に及ぶなど、大きな被害をもたらしています(9月18日14時消防庁発表)。この地震において、倒壊したブロック塀の下敷きとなり、通学中の児童などが犠牲になったことを受け、学校関係者をはじめ各地でブロック塀の安全性への関心が高まっています。
 ブロック塀についてはこれまで、過去の地震を踏まえて安全対策が何度も見直されてきました。1978年の宮城県沖地震による被害を受け、1981年に建築基準法施行令の規準が強化されたことをはじめ、2005年の福岡県西方沖地震の被害などから、建築物防災週間等の機会を捉えて対策が進められてきました。更には、2006年には改正耐震改修促進法により創設された基本方針にもブロック塀の対策が位置づけられ、地方公共団体が倒壊防止にかかる改善指導に努めなければならないとされています。しかしながら、2016年に発生した熊本地震においても、ブロック塀の倒壊により1人が亡くなり、大阪府北部地震においても2人の方が亡くなられています。

自治体が広く注意喚起

 今回の地震において重大な被害が発生したブロック塀は、補強コンクリートブロック造、または、組積造によるものでした。しかし、基礎部分と合わせた高さが規定に違反していたほか、塀を固定する控え壁が未設置であったなど、現行基準を満たしていなかったとされています。これを受けて国土交通省と文部科学省では、学校の塀について、都道府県に対し学校側と連携して安全点検を行うように通知したほか、学校に限らず建築物に付属する塀について、所有者向けの安全点検のためのチェックポイントを提示しています(図1)。
 文部科学省によれば、外観に基づく点検で安全性に問題があるブロック塀等を有する学校は全国に12,652校に上るとしています。そのうち東京都では、都立学校、区市町村立学校、私立学校など合計3,607校のうち、現在の建築基準法施行令に適合しないブロック塀を有する学校は634校、ひび割れ、破損、または傾斜が生じているブロック塀を有する学校は288校に及ぶとしており、早急な撤去と改修、近隣への注意換起が必要としています。
 こうした状況を受け、国土交通省は2019年度の概算要求として危険なブロック塀の除去、改修を盛り込んでいます。各自治体においてもそれに前後して取り組みが進められており、安全の点検や、撤去に関する助成制度について、広く呼びかけています。名古屋市では、ブロック塀の安全確認の呼びかけや市の撤去助成制度に関する記事を、市の広報誌や主要新聞広告欄へ掲載したほか、チラシの全戸回覧を実施するなど、市民への周知活動をきめ細かく進めています。そのほか、各地方公共団体でも相談窓口を設置するなど対応が進んでいます。
 このように各地でブロック塀の安全性に対する関心が高まっており、全国の100を超える市町村で点検による安全確認・撤去と、軽量な素材のフェンス等への改修といった取り組みが進められています。

軽量な木製フェンスに注目

 これまでフェンスやデッキをはじめとしたエクステリアについては、室内と比べて厳しい屋外環境での使用という観点から、耐久性や耐水性、防蟻性、メンテナンス性などの点が大きな課題とされて無垢の木材は敬遠される傾向にあり、アルミニウムや樹脂などが主流となってきました。
 エクステリアに要求される性能のうち、最も重要な点は、屋外環境下で使用されるため、雨水や日射、風、腐朽菌などによる劣化に耐えられる耐久性と、メンテナンスや補修にかかるコストや手間といった経済的な側面の両立です。そのため、エクステリアでの無垢材の利用を進めるには、もともと耐久性の高い樹種の選択や、適切な防腐処理による耐久性の向上、表面処理や形状の工夫などによる劣化しにくい状態への加工といった対策が必要となります。
 これまでは耐久性は高いものの、比較的高単価で合法性の点で疑問が生じやすい広葉樹が限定的に用いられてきました。しかし、近年では、非住宅分野での木材利用の機運の高まりに伴い、日本木材防腐工業組合や(公社)日本木材保存協会などを中心として、塗料や薬剤などの防腐・耐水・防蟻分野での様々な技術開発が進んだことにより、スギをはじめとした針葉樹をルーバーやデッキとして屋外で利用する事例が増加しています。
 日本の森林は戦後の植林により現在、本格的な利用期を迎えています。木は、成長する過程で炭素を体内に固定化し二酸化炭素の排出を削減するため、木の炭素貯蔵効果を十分に発揮させるためには、「伐って、植えて、使って、育てる」という循環サイクルの構築が重要となっています。また、アルミニウムなどに比べて製造時のエネルギー消費量が約7分の1程度と、木は環境にやさしいエコな素材です。地球温暖化を防止し、サスティナブルな社会を実現するためにも、径の大きさが30pを超えるような大径材の利用の拡大が今後の課題と位置づけられており、エクステリアでの木材利用の拡大は今後重要さを増していきます。
 東京都の小池百合子都知事は7月6日、定例会見の中で都立学校へ国産材を利用した木製フェンスの設置を推奨していく方針を示しました。これは、木製フェンスについて、目隠し機能に優れ、周辺環境とも調和しやすいとして、来年度から導入される森林環境税などを見据えて、都市部での国産材の需要拡大を図るとしたものです。都立高校をはじめとした都の5施設で試験的に利用し、効果やコストなどを実証した上で、今後、拡大していくとしています。福島県など、そのほかの地方公共団体でもこれを追随する動きがあり、ブロック塀の代替として、木製フェンスへの注目が高まりを見せています。

新たなエクステリア材を開発

 こうしたなか、ナイスグループは、耐腐朽・耐蟻性能に優れた素材、大径木高耐久赤身材「ObiRED(オビレッド)」を開発しました。これは、宮崎県飫肥(おび)地区を中心に生育する杉の一品種である「飫肥スギ」の、幹が30p以上の大径木の赤身部分だけを用いて、無垢の素材力を損なわないように加工した、フェンスなどのエクステリア材として最適なナイスグループオリジナルの素材です。
 一般的に、丸太の断面は内側が赤っぽく、外側が一定の幅で白くなっています。中心の赤っぽい部分を「赤身」、外側の白い部分を「白太」と呼び、スギはこの赤身と白太が顕著という特徴があります(図2)。この赤身部分には精油成分が多く含まれていますが、飫肥スギは赤身部分の精油成分が豊富です。一般的なスギの精油成分が未乾燥の状態で1%程度であるのに対し、飫肥スギは約2%もあります。この油分が水を弾き、木を腐りにくくするだけでなく、シロアリをはじめとした害虫に対しても強い効果を発揮してくれるのです。これにより、耐久性や防水性、防虫性などに優れることから、古来より木造船の材料としても利用されるなど、飫肥スギは高い品質を誇ってきました。赤身部分のみから木材とするためには、30p以上の大径木にまで育てることが必須ですが、「ObiRED」にはこの飫肥スギの大径木の赤身部分のみが使用されています。
 「ObiRED」は乾燥工程にもこだわっています。一般的な高温乾燥では、高い耐久性のポイントとなる精油成分が落ちてしまいます。一方で、精油成分が減少しないように十分な乾燥を行わなければ、含水率が高いままとなります。その場合、使用していくにつれて水分が抜け、木材が変形しやすくなってしまいます。そこで、屋外に長時間置いて日光と風で脱水と乾燥を行う天然乾燥と、乾燥機による中低温で乾燥させる人工乾燥を組み合わせた独自の技術により、精油成分を損なうことなく、含水率15%以下の良質な乾燥を実現し、高い形状安定性が確保されています。

AQ認証で非住宅にも活用可

 「ObiRED」は、乾式加圧注入処理「AZN(アゾール・ネオニコチノイド)」を実施することで耐久性をより高められます。「AZN」とは、毒性が極めて低い安全・安心な無色の薬剤で、木材の腐れやシロアリからの被害は防止しますが木材の風合いを損なうことがありません。また、水に溶けないため、処理した木材から溶けて流出することがなく、屋外での使用に特に効力を発揮します。溶媒として水を一切使用しないため、木材が膨張せず寸法が変化しないことから、処理後の収縮やねじれ、割れなどの発生が少なくなります。加圧して木材に注入することで、表面への塗布と較べて長期にわたって効果を発揮するというメリットがあり、新国立競技場で使用される木材にも用いられています。
 「ObiRED」はAZN処理を行うことで、優良木質建材等認証「AQ認証」が取得できます。AQ認証とは、JAS規格に規定されていない新しい木質建材等の品質性能等について客観的な評価を行うもので、製材、集成材、合板等の木材、そのほかの複合材料を含む木質材料等を用いた、品質性能評価基準が定められた製品を対象として、技術開発による新製品について品質性能基準の整備を行っています。JAS規格と同等の信頼性が担保されおり、AQ認証を取得した「ObiRED+AZN」は公共建築物や非住宅などにも幅広く活用することができます。
 「ObiRED+AZN」はJIS K 1571規格に規定されている試験にて、厳しい屋外での環境下での耐久性が実証されています。優れた防腐・防蟻性能を持ち、形上安定性にも優れた、木製フェンスでの利用に最適な素材となっています。フェンスとして使用する場合、15年を上回る耐用年数が期待されているほか、他素材と較べて軽く、持ち運びが容易というメリットがあります。

ウッドデッキにも最適

「ObiRED」は、ナイスグループのオリジナルの表層圧密テクノロジー「Gywood®(ギュッド)」(4月15日号参照)と組み合わせることも可能です。「Gywood®」は、軟らかいとされる針葉樹の無垢材の表層部を特に高密度化することで、素材としての硬さや強度を向上させ、更に一般的な無垢材と比べて形状安定性を高めることに成功した技術です。針葉樹の美しい木目の意匠や、質感、風合いを保ちつつ、表面のみをほどよい硬さにすることで、針葉樹の弱点であった傷つきやすさを克服しています。
 「ObiRED+Gywood®」は、表面の木材の細胞がつぶれて吸水性が減少し、内層へ水が浸透することを防ぐことで防水性がより向上するほか、内層は軟らかいため衝撃吸収性に優れ、クッション効果も期待でき、お子様の転倒といったアクシデントに対しても安心なウッドデッキ材となります。冬には温かく夏にはさらっとした足ざわりを実現しているほか、デッキ材として無垢材が敬遠される要因の一つであった肌に刺さるような表面のささくれなどが生じにくくなっています。メンテナンス性についても、無塗装であればデッキブラシで掃除するだけで足ざわりを滑らかに保ち、長持ちさせることができるようになります。
 このように、「ObiRED」は、フェンスやウッドデッキといったエクステリアでの木材利用に大きなアドバンテージを持った素材です。ナイスグループは今後、「ObiRED」の製造技術を地域材へ活用できるよう更に開発を進めています。大切に育ててきた木が、それに見合った付加価値をもって、地域材として都心部や他県、また海外で利用される仕組みをつくっていくことで、各地の林業のモチベーションを高め、人や環境を育てていく原動力にしていくことを目指していきます。