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ナイスビジネスレポート

特別対談
変化の先に見えてくるもの(PROACTIVE)

大建工業株式会社 代表取締役社長執行役員 億田 正則 氏・すてきナイスグループ株式会社 代表取締役会長 平田 恒一郎

 インシュレーションボードの生産をはじめ、多くのエコ素材を生み出し、安全・安心・快適・便利・健康という視点から住生活の質を向上するための内装建材などを多く提供している大建工業梶B海外展開や非住宅建築分野など、新たな事業領域を意欲的に開拓する大建工業鰍フ億田正則社長をお招きし、変化の先へ向けた取り組みについてうかがいました。

会社を変えた繊維板


平田 地球温暖化をはじめとした気候変動への対応が最優先事項となっています。SDGs※の17項目のうち木材産業は14項目に関係し、今後より一層の取り組みが求められています。
億田 私もSDGsには共感します。先日発刊した「DAIKENグループレポート2018」には、持続可能な社会の実現に向け、事業活動を通じた社会課題の解決と新たな価値創造を目指すプロセスを明記しました。ふり返ってみるとこれらの取り組みは今に始まったことではありません。先人たちは、地球温暖化や持続可能という言葉もない時代から、木を用いて人と社会を豊かにする製品をつくってきました。例えば、私どもが合板メーカーから建材メーカーへ一歩踏み出す転機となった木質繊維板「インシュレーションボード」もその一つです。  
 インシュレーションには断熱、遮音、絶縁といった意味があります。1959年に商品名「ダイケンボード」として発売。断熱、調湿機能を持つ軽量な天井材、壁材として大変ご好評をいただきました。この製品の開発は、合板に次ぐ第2の事業を模索していた時に、木質資源を有効に活用する点に着目したことが始まりです。山林が多い岡山県に工場を建てたのですが、端材を活用するという点で当時の岡山県知事に共感いただき、お力添えをいただきました。また、この挑戦が「ダイライト」や「MDF」といった現在の素材事業の柱をつくる基盤となり、会社の方向性を決めることとなりました。
平田 脱炭素社会に向けた取り組みが加速し、世界は大きな変化の渦中にあります。当社でも木質繊維断熱材「ウッドファイバー」に力を入れていますが、海外ではこうした環境に配慮した製品が当たり前となってきました。
億田 確かにヨーロッパ各国では、インシュレーションボードは断熱材として日本をはるかにしのぐ消費量があります。省エネ基準や壁構造の違いはありますが、それを知った時には驚きと喜びを覚えました。例え話になりますが、回転寿司店は、お客様が求める味、価格、手軽さを実現しているから繁盛し、寿司を通じて魚の価値を伝えています。当社も「インシュレーションボード」を通じて木質資源の価値を消費者に伝えるため、製品開発と用途拡大に力を入れていきます。

※ Sustainable Development Goalsの略称。2016年から2030年まで達成すべき環境や開発に関する17の目標

DNAを受け継ぐ新製品「グラビオエッジ」


平田 海外の生産拠点が大きな役割を果たしています。
億田 MDFの生産拠点は現在、マレーシアとニュージーランドの2カ国に合計4カ所あります。この4工場合計の生産能力は年間約60万m3で、会社を支える大きな柱の一つとなっています。マレーシアの2工場は広葉樹チップを原料とし、一方、ニュージーランドの2工場は針葉樹チップを原料としています。薄物から厚物まで幅広く生産可能で、家具や木工、建材向けの用途が広がっています。MDFはグローバルな素材であり、日本にとどまらず海外でも多くの需要があります。
平田 最近発売された壁材も好調だと伺っています。
億田 今年6月に発売した「グラビオエッジ(GRAVIO EDGE)」は住宅だけでなく、公共建築物、商業関連施設での採用を想定し、不燃材料の認定を取得しています(図1)。最大の特長は、高い意匠性と優れた施工性で、深い凹凸、シャープで角度のあるテーパー、特殊な多色塗装により、厚さ9ミリの中に表現できる最大限の意匠を施しています。また、ダイライト基材であるこの製品は、他の不燃壁材より軽く、手ノコやカッターでも切断可能で、接着剤とピンネイルだけで施工が可能です。エントランスやリビング、ベッドルームなどにアクセントで使っていただくことで、上質な空間を演出できます。

デジタル化、超高齢化からチャンスを探る


平田 ボストンコンサルティンググループの御立尚資さんによれば、現在は工業化社会からデジタル化社会への変革期で、両者が併存する時代とされています。こうした大きな変化をどのようにとらえていらっしゃいますか。
億田 これまでの変化をどうとらえ、これからの変化をいかに前向きに積極的に、つまり「PROACTIVE(プロアクティブ)」にとらえるかです。スマートスピーカーが急速に普及していますが、これに対応した家電が続々と登場してきています。近いうちに家電量販店に並ぶ全てのテレビやエアコン、冷蔵庫や洗濯機の値札に、スマートスピーカー対応と書かれているようになるはずです。そして、家電だけではなく住宅設備や建材を含む「家」という空間全体を、手軽に快適にコントロールできる時代が必ず来ると思っています。これからの住宅には、どんな資材や施工が求められるのか、思いを巡らせているところです。
平田 デジタル化、高齢化など、社会は驚くほどのスピードで変化しています。業界としてそうした変化にどう対応していくべきでしょうか。
億田 ある調査によれば、データを蓄積するデータセンターの延べ床面積は年々増加傾向にあると言われます。こうしたデータセンターに求められる機能として、電力の供給が途切れないこと、地震に強いこと、防火・消火設備の整備、温度と湿度の管理、セキュリティー対策などがあり、住空間に似ています。それを考えると何か商売のチャンスがあるのかもしれません。   
 また、超高齢社会には「居住空間の変化」と「暮らし空間の変化」という2つの変化があります。「居住空間の変化」については8割が室内で起きるとされる高齢者の事故に対し、私たちが果たす役割は極めて大きいのではないでしょうか。もちろん、先ほどの話にあったデジタル化社会への変化は、高齢者の生活を支えたり、家族の見守りを助けたりと、非常に有効に使われてくるはずです。  
 一方で、「暮らし空間の変化」については様々なルールや危険が混在していることを前提にしなければいけません。例えば、高齢者がアクセルとブレーキを踏み間違えるとか、高速道路を逆走するといった報道をよく耳にしますが、こういった問題は社会全体で起こり得ます。高齢者の増加を想定したまちづくり、家づくり、ルールづくりが進めば、必ず新たな需要と我々が貢献できる糸口が生まれてくるのではと考えています。  
 団塊の世代が75歳を迎える2025年には私も75歳になり、団塊ジュニアが75歳を迎える2050年には100歳になりますが、その時代をしっかり見届けたいと前向きに考えています。

「住宅ストック」を正しくイメージする


平田 業界の変化を考えるとき、国土交通省の「住生活基本計画」は一つの指針になります。
億田 「住生活基本計画」で掲げられている8つの目標のうち、とりわけ国や業界団体が積極的に取り組んでいるのが、「目標4:住宅すごろくを超える新たな住宅循環システムの構築」「目標5:建て替えやリフォームによる安全で質の高い住宅ストックへの更新」「目標6:急増する空き家の活用・除却の推進」の3つです。この3つの共通点は住宅ストックからの視点です。住宅ストックの総数約6,063万戸のうち、耐震性・断熱性・バリアフリーの性能を満たし、次の世代に継承できる良質な住宅は約200万戸で、全く性能を満たさない住戸と空き家が約1,750万戸あります。残りの約4,100万戸に関しては改修やリフォームの余地があり、良質な住宅として次の世代に継承できる住宅になり得るということです。  
 空き家820万戸という数字はよく耳にしますが、多くを占めるのが、持ち家や分譲住宅などのその他空き家約320万戸と賃貸用空き家420万戸です。このうち、改修やリフォームの余地があり、かつ、腐朽や破損がなく、最寄り駅まで1キロメートル圏内の物件、つまり実際に活用できる可能性が高いのは、その他空き家約48万戸と賃貸用空き家137万戸に限られます。  
 これらを踏まえて、改めて住生活基本計画の目標4〜6を大まかに咀嚼(そしゃく)すると、@住宅ストックの性能を把握すること、つまりインスペクションです。A性能に問題がある住宅ストックは、建て替えやリフォームによって質を高め、入居者にとって安全・安心・健康・快適な空間を実現すると同時に、活用、継承できる資産にすること。B活用が難しく生活環境に悪影響を及ぼしかねない空き家は撤去するということです。差し迫って取り組むべきなのは、Aの「安全・安心・健康・快適を実現する」ことでしょう。なぜなら、住む人の生命や健康に直結するからです。当社もその一端を担っている責任と誇りを忘れず、積極的に取り組んでいきたいと思っています。
平田 同じく、私どもも住まいの耐震化やスマートウェルネス住宅の普及を通じて、今後も一生懸命お役立ちしていくつもりです。

プラットフォーム活用で三方良し


億田 先ほど挙げた@ABを進めるのは簡単ではありません。住宅の性能を把握するのはインスペクションを行う会社、リフォームはリフォーム事業者で、空き家を解体するのは解体事業者で、住宅に新しい入居者を募ったり、売却転用したりするのは不動産会社です。所有者が高齢者になると、なかなか話が進まないケースもあるでしょう。入居者の有無に関わらず、住宅に何らかの変化を起こすためには、いかに所有者にその気になっていただき、実際にメリットをどれだけ与えられるか、そして、携わる会社にとっても商売として成り立つのかどうかが問題です。  
 残念ながら処方箋を持っているわけではありませんが、「プラットフォーム」という仕組みをうまく活用できないかと考えています。プラットフォームとは商売の場を提供する仕組みのことで、売りたい側と買いたい側を結びつけるネット通販とか、ショッピングモールなどもその一つです。@ABをプラットフォームの仕組みに乗せ、携わる複数の会社を呼び込み、住宅所有者と結びつける。たとえ個々の商売ではもうかからなくても、3つまとめて最適化してトータルで生み出した利益を、住宅所有者、携わる会社、プラットフォーム運営会社で分け合えば、「三方良し」とならないだろうか。そんなことを考えています。
平田 お互いの連携がますます大事になるということですね。
億田 空き家と同じように、人口減少や少子化、高齢化あるいは暮らしの変化によって使用されなくなった建物の活用も同じことが言えます。例えば学校です。文部科学省によると2016年5月現在、建物が現存している廃校約5,900校のうち、約8割は活用済み・活用予定とのことですが、見通しが立たない廃校が全国で約1,300校あるそうです。活用されている廃校の用途を見ると、学校としての再利用、体育、教育、文化施設としての活用が多い中、福祉・医療施設、企業の施設や備蓄倉庫、更には住宅といった事例もあります。先ほどのデジタル化社会という点で言うならデータセンター、モバイルオフィスとして活用される可能性もあるかもしれません。  
 先々決して明るい話題ばかりではありませんが、暗いからと言って足元ばかり見ていると、周囲の変化に気づかずいつの間にか道に迷うことにもなりかねません。そうならないよう「PROACTIVE」な目で経営に取り組みたいと思います。
平田 本日はお忙しいところありがとうございました。