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ナイスビジネスレポート

特別対談
「家電のパナソニック」から「くらしのパナソニック」への挑戦

 パナソニック株式会社 専務執行役員 エコソリューションズ社 社長 北野 亮 氏・すてきナイスグループ株式会社 代表取締役会長 平田恒一郎

 AI(人工知能)技術が急速に進化するなか、政府は新成長戦略「未来投資戦略2017」において、第4次産業革命が到来する社会を「society5.0」とし、大きな転換期を迎えたとしています。今回は、パナソニック鰍フ専務執行役員とエコソリューションズ社の社長を務められる北野亮氏に、IoT(Internet of Things)とAIの導入で変化するくらしについてお聞きしました。

100周年を迎え 「くらし」 を創造する企業へ


平田 パナソニックグループは今年で100周年を迎えられたとのことで、誠におめでとうございます。当社とも1966年から半世紀にわたるおつき合いをいただき、感謝申し上げます。
北野 ありがとうございます。ご存知のように松下電工鰍ヘ、1918年に松下幸之助がアタッチメントプラグを製造して創業しました。エコソリューションズ社はその流れを脈々と引き継ぐ企業です。世間では家電のイメージが強いのですが、配線器具、ランプ、樹脂の技術を使った化粧板、雨どいから、現在の内装事業や水回りの事業に広がっています。
 次の100年は、こうした住設建材や電設資材を製品・部材としてではなく、もっと広い目で捉え、人々が24時間過ごす空間をより快適にする事業を行いたいと考えています。エコソリューションズ社は、暮らしそのものを豊かにするカンパニーとして社会に貢献する存在でありたいと願っています。
 パナソニックならではのチャレンジの例として、昨年4月にパナソニックホームズ鰍ゥら発表された「エアロハス」があります。パナソニックの「専用エアコン+換気システム」による換気・空調システムで、家庭用のエアコン1台で百数十uの家を全館空調でき、かつ個室の温度・湿度調整も可能な上、地熱の活用と各室を温度センサーで制御することで、快適性と省エネを実現しています。更に、花粉はもちろん、PM2.5にも対応できる空気浄化能力も持っています。これはまさしくエアコンという"家電"と、空気質の機器を持つ当社の強みが融合した結果として生まれた商品だと思います。
 当社は、半世紀以上前の「適正配線運動」に始まり、パートナーの皆様とタッグを組み、日本人の暮らしをより快適にするという強い使命感を持って住まいづくりにさまざまな働きかけを行ってきました。そして、住宅関連業界の皆様と新しい商いを生み出そうとする想いはもっと熱かったと感じます。成熟した時代においてはこうした原点を忘れずに進んでいかなければと思っています。

コトの価値観に新たな市場を


平田 超高齢社会を迎えた日本における、今後の住宅産業の展望についてお聞かせ下さい。
北野 ほとんどのシンクタンクが、2020年以降、急激に住宅着工戸数は減少し、2030年には60万戸に限りなく近付くだろうと予測しています。この2〜3年でしっかり準備を進める必要があります。原材料、人件費、物流費の高騰といった喫緊の課題もあり、日本の住宅産業の生き残りをかけて真剣に考える時期であることは間違いありません。新築で家を建て、一定期間が過ぎたらリフォームするという従来型のモデルではなく、新たな需要を掘り起こす必要があるだろうと考えています。
 先進国の中でも日本経済の成長は鈍化していますし、少子高齢化は進み、2040年には単身世帯が4割になると言われています。こうした大きな転換期において、家や暮らしの有りようにフォーカスして、事業を考えていかなければならないと思います。
平田 若い方がクルマや家を欲しがらなくなったと言われますが、カーシェアリングや民泊に代表されるように、ライフスタイルそのものが変化していますね。
北野 関心が「モノ」から「コト」へと変化しています。最近は高級なクルマや家を所有することより、使ったり、使いこなしたりすることによる体験や時間、空間が重視されています。今後はクリーニングや料理をアウトソーシングしようとする人がもっと増えるでしょう。そういう意味では、冷蔵庫や洗濯機も決して安泰な商品ではありません。私たちは「コト」の価値観に新たな市場を創出したいと考えています。
 昨年12月に発売した、会話を楽しみながら料理や食事ができる「いろりダイニング」や、わが家で露天風呂の心地よさを感じる「マイホームリゾート」、サロンのようなドレッシング空間「サロン ア・ラ・メゾン」といった商品も、「いまの私がしあわせな場所を提案する」というコンセプトに基づいた新たな住空間のご提案の一つです。
 また、今までにない空間を創造する決意が具体化された商品として、「スペース プレーヤー」があります。これはスポットライト型のプロジェクターで、今までモノを照らすだけだった照明に映像や音響を融合させ、更に光の中に情報を映し出すこともできます。

無縁ではいられない超スマート社会


平田 国は目指すべき未来社会の姿として超スマート社会「Society 5.0」を提唱しています。「Google Home」や「Amazon Echo」といったスマートスピーカーをはじめ、IoTやAI(人工知能)の導入によって新しい時代が加速度的に進んでいると感じています。
北野 電話の時代は「ヒト」と「ヒト」とが電話を介し、場所を越えてつながることが可能となりました。ネットの時代は、それに加え、時間を超えたつながりを生み、そしてIoTの時代は「モノ」と「モノ」とが「ヒト」を介さずにつながることを可能とします。「ヒト」が申告しなくても、たとえば睡眠時間や血圧といったデータが集められ、蓄積されていくわけで、これはとても大きな変化です。
 そして、これらのデータを元に、AIによって、もうすぐこの人は外出するとか、どうも体調が悪そうだとか、そういった学習や予測ができるようになるわけです。場合によっては健康状態に合わせて食料品が送られてきたり、病院に予約が入れられてしまうようなこともあるかもしれません。このようなデータと学習によって生まれる新しい仕組みで、どのような快適な暮らしが創造できるのかを私たちは考えていく必要があります。
 ある調査によれば、2020年に向けてIoT機器は300億台に達すると予測されており、これは2015年から5年間で2倍に増加する計算になります。他にも、あらゆるものにカメラが搭載され、記録や情報伝達に使われるユビキタスビデオや、ロボット、ドローンといった技術も今年は注目すべきトレンドに選ばれており、住宅分野、建材分野でも無関心ではいられないでしょう。国交省がIoTを活用した住宅の実証プロジェクトを公募するなど、国をあげて後押しする動きも高まっています。IoTやAIによってどのように暮らしが変わるのか、更には住宅産業界が変わる可能性があるのかについては、当社にとっても大きなテーマの一つです。

進むIoT住宅への取り組み


平田 各社がIoT住宅に本腰を入れ始める中で、御社はすでに積極的にIoT住宅に取り組んでいらっしゃいますね。
北野 バージョンアップしたスマートHEMS「AiSEG2(アイセグ2)」を3月に発売しました。これにより、他社との連携が27機種にまで強化され、スマートフォンで遠隔操作をしたり、外出先から家の状況をコントロールしたりすることができるようになりました。
 例えば、太陽光発電システムと組み合わせた「AIソーラーチャージ」という機能は、日常の電気使用量や天気予報をもとに、予測した余剰電力によってエコキュートの沸き上げを夜間にするのか、昼間にするのかを自動で判断してくれます。
 今年度中には、スマートスピーカーと連動して音声で操作ができる仕組みを構築する予定です。スイッチが遠かったり、手が塞がったりしている時にパネルを操作する必要はありません。「行ってきます」と言えば、家の中の不要な電気は全て消え、電動式のシャッターが閉まる。また、「ただいま」と家に入った途端に全てが動き出します。スマートフォンの操作で施錠することもできます。
 このようにIoTでつながることによって、エネルギーをマネジメントするだけでなく、一歩踏み込んださまざまな価値の提供が可能となると考えています。現在はスマートHEMS、つまりエネルギー管理システムの商品として紹介していますが、この名称もいずれは変えていかなければいけないのかもしれません。この「AiSEG2」をさらに進化させることによって、ゆくゆくはセンサーや機器の情報から生活パターンを予測して、ヒトが指示しなくても最適な環境に制御されていく、そんな時代も来るだろうと考えられます。

建材がヒトを見守るという発想


平田 住宅を取り巻く環境も予想以上のスピードで変化しています。それでも、電化製品の話としてなかなか身近にイメージできない工務店の経営者の方も多いようです。
北野 その点については、電気の配線がない建材の世界もIoT化する可能性があると考えています。引き戸でドアを開閉する、あるいは床を歩くことによる極めて微小な振動によって電気を起こす技術は、すでに確立されています。そこで、建材に人の動きを感知するセンサーを付けてIoT化し、将来的にはAIにより新たな可能性を生み出すこともできるのではと考えています。例えばベッドから下りる、ドアを開け閉めするといった無意識の動作情報そのものがAIに蓄積され、建材がヒトを見守ることが可能になれば、新しい顧客価値が生まれるかもしれません。これについても、この2〜3年の間にビジネスにつながるようにしていきたいと思っているところです。IoTで「モノ」と「モノ」が集まり、情報が集まるビジネスはまさにこれからです。
平田 介護施設、老人ホームなどにも応用できそうですし、アイデア次第でIoT建材は、住まいに新たな快適さを広げますね。
北野 眠りの深さ、身体の動きをシーツやベッドで感知して、最も心地よく目覚められそうな時間にゆっくり起こしてくれたり、床にセンサーを仕込めば、ヒトが移動するのに合わせてBGMも移動して、家中どこに行っても楽しく家事をすることができるでしょう。スマートフォンを手に持つことなく、家のどこからでも会話ができるかもしれません。意識的に操作する家電や電設資材、住宅設備という観点に加え、ヒトが無意識に接する世界とIoTやAIを結ぶことによって生まれる快適さも、積極的に考える必要があると思います。

IoT、AIで大きく変わるサービスと流通


平田 安定供給やジャストインタイムの付加価値のある物流、決済機能、在庫管理などの向上も私どもの大切な役割だと考えています。お客様やお得意様へのよりきめ細やかなサービスを実現するための技術はどのように進んでいるのでしょうか。
北野 8Kの超解像度映像を利用して、あたかもその現場にいるようなリアルな体験と提案を考えています。CGで思わず触りたくなるような木質感を表現できますし、瞬時にして色調、木目などを変えることもできます。ここにAIの技術を取り込むと何千、何万というお客様とのやりとりが蓄積され、短時間で志向にあった臨場感があるご提案ができるようになるでしょう。 分電盤を介して家電、電気、給湯、空調とサービスセンターと結びつけ、故障の際、すぐ駆けつける体制も準備することができます。AIによる学習機能が進めば、壊れることを予測してパーツの交換に向かうこともできるでしょう。そのことでユーザーの満足度が向上するのはもちろんですが、予測の下にスタッフを配置できるので、人出不足も解消され、経営効率も上がります。
 同様に、経営を圧迫する物流コスト対策にもこうした技術は応用できます。ICタグを利用して工場から現場までサプライチェーンを一気通貫にコントロールできれば、「モノ」の動きを学習し、最適な在庫管理を行うことができると思われます。
 流通革命という点では、現在、当社グループのコネクティッドソリューションズ社が福岡市に本社を持つスーパーマーケットと協力し日本初のスマートストアにも取り組んでいます。カートに商品を入れるだけでレジを通過しなくても精算される、無人化・自動化を目指したストアです。ポイントはスマートカメラを導入することで購買動向のデータを分析し、在庫を自動的に検知することで品ぞろえの充実、改善に生かすことができる点です。結果としてそれがお客様の満足度向上にもつながります。

新たな価値から新たな商いを創り出す


平田 最後にパナソニックグループの更なる飛躍に向けた取り組みをお聞かせ下さい。
北野 こうした新たな暮らし方、新たな価値を皆様に実感していただくために、当社ではショールームだけではなく、全国にあるパナソニックホームズの展示場、あるいは小さな街角モデルハウスでも積極的に提案を行っています。綱島や藤沢でのスマートタウンづくりもその一つです。それらが新たな暮らしのショーケースとなり、結果的に皆様方の商材として使っていただけるよう取り組んでいきたいと考えています。
 また、変化にスピーディーに対処するために、全社をあげて大きな組織改革、人材の投入を行っています。現在、シリコンバレーに拠点「パナソニックβ」を構え、今までにない発想で住まいの在り方にイノベーションを起こそうとしています。日本から3カ月、あるいは半年ぐらいのスパンでいろいろなチームを送り込み、会議なしの自由な発想でアイデアを形にし、成果を持ち帰るという取り組みを加速しています。
 4月からのエコソリューションズ社のスローガンは、『 「変える」そして「創る」〜新・提供価値×売り方変革=新・需要創造〜』です。快適な暮らしをつくるという強い使命感と熱意をもう一度取り戻し、なおかつ、IoTやAI等の新たな武器を手に、新たな価値を生み出し、新たな販売スタイルに変えていくということです。これにより新たな需要を創造し、お客様の新たな商売につなげたいとの思いが込められています。
 パナソニックグループは日本にある住設建材のメーカーの中では、突出した力量と技術的な蓄積リソースを持っていると自負しています。それが宝の持ち腐れにならないよう、100年目の節目を皆様方と力強く進み出したいと思います。
平田 本日はお忙しいところありがとうございました。