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ナイスビジネスレポート

木と住まいの大博覧会「建築物への木材活用シンポジウム」基調講演
無垢材の活用と地方創生
林野庁次長 牧元 幸司 氏


 「木と住まいの大博覧会」内で2月16日に開催された「建築物への木材活用シンポジウム」にて、日本の潤沢な資源である森林の循環利用に向けた木材利用の更なる拡大について、林野庁次長の牧元幸司氏による講演が行われました。今回はこの講演内容についてまとめました。


利用期を迎えた日本の森林資源

 日本の森林蓄積は49億m3と、この半世紀で約2.6倍に増加し、森林資源は本格的な利用期を迎えています。2016年の木材需給を見ると、国産材供給量は2,714万m3と2005年から約1,000万m3増加しています。木材自給率についても2002年を底として上昇に転じ、総需要量7,807万m3に対し、34.8%にまで達しています。
 この豊富な森林資源をいかに活用し林業の成長産業化と地方創生を実現していくかが、林野行政の今後の課題と考えています。特に、持続的な林業経営という観点から、A材丸太の活用、つまり無垢製材品の需要をいかに喚起していくかが重要となっています。

住宅の国産材比率向上がカギ

 建築物の木造率を見てみると、3階建て以下の低層建築物については住宅の約9割が木造であるのに対し、非住宅では約1割、4階建て以上の中高層建築物については住宅・非住宅ともにほぼ木造以外で建てられているのが現状です。少子高齢社会の到来に伴い、低層住宅は今後、徐々に減少していきます。つまり、木材の活用という点では、低層の非住宅や中高層建築物といったこれまであまり木が使われていなかった分野における木造化・木質化を進めていくことが重要となります。
  一方で、木造軸組工法の住宅における国産材比率については、部材によって異なります。例えば、柱材の国産材比率は37%で、このうち製材が25%、集成材が12%となっています。残り63%を占める輸入材についてはほぼ全て集成材で、つまり国産材比率が比較的高い柱材でさえ7割以上が集成材で、製材(無垢材)が3割に満たないというのが実情です。こうしたところへJAS機械等級区分構造用製材品(JAS製材品)の取り扱いを拡大させていく必要があります。
  また、輸入材が主体となっている2×4工法住宅などについても、国産材需要の拡大を図っていく必要があります。2×4材については、2015年にJAS規格を見直し、国産材の使用しやすい環境を整備しています。現状、国産の素材生産については、大半が軸組工法用の柱や梁の長さである3・4・6mに合わせて製材しています。そのため、縦継ぎ加工により無駄なく長さを調整することで、2×4工法にも対応できる工場の整備を進めています。現在、2×4材のJAS認定工場は全国で21カ所(うち18が製材工場)となるなど、供給体制は整いつつあります。国産材の利用については環境性や、地域経済の活性化への貢献度も高いことから、利用に対する意識は高いとの声もいただいています。

非住宅分野での木材活用

 ここ数年、非住宅分野において木材利用の拡大を図るため、一般流通材や大径木を活用した新しい取り組みがなされてきました。例えば、現在、一般流通するJAS製材品を重ね合わせて接着した「束ね重ね材」の開発により木造で大スパンを実現した事例や、大径材の活用の点から、大断面のJAS製材品を使用した事例が出てきています。また、商業施設や駅舎において、不燃処理木材の活用により、木を現しで使用するといった木質化の事例などもあります。
 林野庁としても、低層の中・大規模建築物の市場において、品質及びコストの面で競争力を持つ木造建築物の普及を図るため、一般流通材のプレカット等による標準化・合理化に向けた仕組みの整備といった技術支援を実施しています。また、(一社)中大規模木造プレカット技術協会等によるセミナーの開催などを通じた担い手の育成にも注力しています。
 そのほか、内装材分野においても様々な取り組みが進んでいます。床暖房にも対応できる無垢のフローリング材や、立体感のあるデザインが特長的な壁材、薬剤を使用せず、熱と水蒸気だけで処理した木材による木製サッシなど、国産針葉樹を使用した意匠性や機能性に優れた製品が開発され、様々なシーンでの活用が進んでいます。

JAS製材品の供給を拡大

 今後、木造が鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比較してお施主様に選ばれるようにするためには、コストだけでなく品質・性能の確保が重要となってきます。非住宅分野においては、品質や性能が明確で構造計算が可能な無垢材として、JAS製材品をしっかりと扱っていくことが大切です。しかし、JASの格付率(その品目の推定生産量に占めるJASの認定数量割合)については、集成材94%、合板82%と高い水準にあるものの、製材全体で見ると、いまだ8%にとどまっています。厳密な構造計算が求められる非住宅分野において、無垢材を用いて木造化を推進していくためには、JAS製材品の格付率を今後高めていくことが重要です。
 一方で、JAS製材品の供給量についても課題があります。2015年度のJAS製材品の格付実績は27道県、60万m3にとどまっています。これまでは、補助事業を活用して年間の地域材利用量が概ね1万m3以上(原木換算)の木材加工施設を整備する場合の要件は、施設のJAS認定取得のみでした。しかし、今後JAS製材品の供給力を拡大させていくため、2017年度からは一定量のJAS製材品の「生産」と「格付」を必須要件としました。これにより供給量の拡大を図っています。
  更に、JAS製材品の需給拡大を支援するため、「林業成長産業化総合対策のうち非住宅分野を中心とした無垢構造材等利用拡大事業」に、2018年度当初予算として5億円、更に2017年度補正予算として11億円が決定しています。これは、JAS製材品を構造材として積極的に利用する建築事業者、製材工場、プレカット工場、流通事業者、設計事業者といった事業者が行う「JAS構造材活用拡大宣言」を登録・公表し、お互いのマッチングを進めていくというものです。更に、宣言を行った建築事業者が、JAS製材品を活用して他の建材から木材への切り替えを促すなど、地域における先例となる建築を実証的に行う場合、JAS製材品の調達費の一部を支援するというもので、原材料費の補助という直接的な支援策となっています。

新たな森林管理システムを導入

  JAS製材品の利用拡大に向けては、「伐って、使って、植えて、育てる」という木材資源の循環利用を促進し、適切な森林整備を進めていく必要があります。「木づかい運動」をはじめとした木材利用の機運を醸成する様々な取り組みが進んだことで、現在、素材生産事業者が活況を呈してきました。このサイクルをしっかりと回し、山側が柔軟に素材を供給できる体制を構築していかなければなりません。
 従来より各地の森林組合を中心として山側の集約化に取り組んできましたが、民間ベースでは限界があります。林野庁では現在、新たな森林管理システムの構築を推進しています。これは、森林管理意欲のない森林所有者から、市町村が森林の管理委託または寄附を受け、素材生産面で条件の良い山林は、意欲のある事業体に経営を再委託するというものです。条件の悪い山林については新たに導入された森林環境税を使用して、市町村が間伐などの手入れを行います。森林所有者の大半は、自身で森林経営を行える状態にはありません。森林経営を市町村に集約化し、森林環境税を財源として間伐や路網の整備を行うことで、奥地で条件の悪い山林などの管理を可能としています。更に、所有者の大半が分からない共有林などについても、判明している所有者の同意を得て、市町村による公告といった適切な手続きを行うことで、市町村に経営管理権を預ける形で進める予定です。
 樹木を伐採して、再造林を行うといった森林の経営管理権を市町村に集めた上で、経済的に上手く回るような山林については意欲と能力のある林業経営者に再委託して効率的な経営を行っていただくことで、木材が更に流通するといったスキームを構築していきます。
 これらの取り組みを通じ、林野庁としては、林業の成長産業化と地方創生につなげていきたいと考えています。