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ナイスビジネスレポート
新春経済対談
2018年の日本経済の展望と経営戦略
株式会社浜銀総合研究所 代表取締役会長 兼 社長 大久保 千行氏・
すてきナイスグループ株式会社 代表取締役会長 平田 恒一郎


 今年の日本経済は、大発会の日経平均株価の終値が昨年末から741円39銭高の2万3,506円33銭と26年ぶりの高値水準となり、順調なスタートを切りました。日本経済が本格的な回復に向けて動き出す中、今回は新春経済対談として兜l銀総合研究所の大久保千行会長をお迎えし、2018年の日本経済の展望と経営戦略について伺いました。



2017年を振り返って

平田 新年おめでとうございます。昨年の日本は、企業収益や雇用所得環境が改善し、景気拡大局面も「いざなぎ景気」を超えて戦後2番目の長さとなるなど、緩やかな回復を遂げています。昨年を振り返っていかがでしょうか。
大久保 2017年の年初は、アメリカ・トランプ政権の政策を巡る不透明感が強く懸念され、世界経済への影響が心配されていました。しかし、ふたを開けてみれば、トランプ大統領が選挙公約に掲げていた中国の為替操作国への認定といった措置は見送られ、悪影響を及ぼすことはありませんでした。一方、アメリカの景気については、政権交代前より労働市場は完全雇用に近く、個人消費も堅調に推移するなど、ファンダメンタルは依然として良好であり、FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)も金融引き締めの方針をとっています。
 ヨーロッパについては、イギリスのEU離脱による影響が懸念されましたが、イギリスが国内向けの政策に注力したこともあり、大きな波乱要因にはなりませんでした。ユーロ経済は引き続きドイツがけん引し、国ごとに差はあるものの、財政危機にあったフランスやギリシャも持ち直しを見せるなど、安定的に推移しました。
 中国経済は減速気味と言われるものの、成長率は6%台と世界的に見ると相当に高い水準を維持しています。また、減速の要因は国内経済における経済事情によるものであり、貿易に関しては大きな変動は生じていません。
 こうした世界経済の回復を背景として、日本経済は輸出が増加基調をたどり、国内需要が底堅く推移しました。また、企業収益や業況判断が改善する中で、更新投資や省エネ投資、省人化投資などの設備投資も増加基調となり、安定的な企業収益の循環が見られた1年でした。
平田 総じて明るい1年だったと言えますね。心配なのは、個人消費が力強さに欠ける点です。
大久保 昨年は、長雨や台風などの自然災害による影響を受けた面もありますが、個人消費が上向かない要因の一つとしては、可処分所得、いわゆる手取り収入が伸びていないことが挙げられます。企業収益が過去最高を記録し、大企業を中心に給与や賞与が上がっていますが、同じく社会保険料も増額されていることから手取り収入は増えず、それが景気の良さを実感できない理由となっています。ただし、社会保険料の増額については、少子高齢化による課題を解決するため、国はこれを財源として社会福祉政策を講じており、避けられない状況にあると思います。
 また、手取り収入が増えたとしても、将来への不安感から、若い世代を中心に収入の多くを蓄えに回しているのが実態です。そのため、どの金融機関でも個人預金が増え続けており、消費マインドが上向いていないことも要因です。
 更に、人手不足であっても賃上げがしにくい状況もあります。大企業は賃上げをして雇用を確保しているものの、中小企業は賃上げする体力が乏しい場合が少なくありません。また、少子高齢化により労働力人口が減っている中、特に若い世代の方々の価値観や仕事観は大きく変化してきています。賃金を上げれば雇用者が安定的に集まるという状況ではなくなってきています。このことは、将来的な不安要因と言えます。
 現在、消費をけん引しているのは、年収1,000万円以上のいわゆる富裕層とシルバー層です。これらの特定の層だけでなく、総じてどの世代も景気の良さを実感でき、消費が目に見える形で様々な業界に行き渡るようになるためには、企業収益の一層の向上と、更なる賃上げによって可処分所得が伸びることが不可欠となります。
平田 一方で、肌感覚としては、東京だけでなく地方都市においても活気があるように感じます。特に、外国人観光客の姿がまた増えていますね。
大久保 現在のインバウンドの動向として、以前の中国人観光客を中心とした爆買いといったいわゆる「モノ消費」から、観光や体験をして消費する「コト消費」に変わってきています。「モノ消費」の場合、出国時に税関を通すことから、統計的には輸出に計上されます。一方、京都の寺社を巡って、そこで買い物や飲食をした場合などの消費については、我々日本人による消費と同様、個人消費としてカウントされてしまい、実態がつかみにくくなります。とは言うものの、「コト消費」によるインバウンドは着実に浸透してきたと言えると思います。
平田 景気も拡大基調を続けており、外食や運輸などのサービス業で値上げの動きが出始めるなど、本格的な「脱デフレ」の傾向が見えてきていますね。一方で、メディアでは景気の見通しについて、ネガティブな論調も多いように感じます。
大久保 メディアが報じているように、景気の良さの実感が乏しいとは言いつつも、マクロ的に見れば、非常に緩やかながら確実に景気は拡大しており、この基調はまだまだ続くと見ています。アベノミクスによる金融政策と財政政策によるところが大きく、その効果は間違いなく出ていると言ってよいかと思います。しかし、金融政策と財政政策だけではこれ以上の成果は難しいと感じています。日本が更に成長していくためには、この景気拡大基調が続いているうちに、世界的な潮流である人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)など最新のICT(情報通信技術)がもたらす第4次産業革命の波に乗り、これをうまく取り入れることができるかどうかが重要だと考えています。



人口減少局面における企業経営

平田 日本は人口減少局面にある中、旧態依然としたビジネスモデルでは行き詰まりを感じる状況になっています。企業は今後の生き残りのために、ビジネスモデルの転換や存在のあり方など、変革が迫られていますね。
大久保 日本は、少子高齢化により人口減少が加速しており、マクロ的に見ると需要の規模はどんどん小さくなっています。そこに人口減少以前の企業数が存在していれば、当然のように需給バランスは崩れ、倒産や廃業する企業が出てくることになります。実際、零細企業を含めた企業数は最近の5年間で約40万社が減少しています。こういった状況下では、人材力や組織力を有する大企業には対応力がありますが、中小企業はその影響を直接的に受けるため、ビジネスモデルの転換を迫られるケースが多発します。一方、人材不足の問題もあり、ビジネスモデルの変革をなかなか進めにくい企業もあります。いずれにせよ、経営者が現状に対して危機感を持ち、旧態とした意識をどれだけ変えられるかにかかっており、経営者次第と言えます。
平田 今後の企業経営を考えるに当たっては、事業承継も大きな課題ですね。
大久保 今年は、団塊世代の経営者が70歳を超え、大量引退期を迎える「大事業承継時代」のスタートの年とも言われています。横浜銀行でも事業承継に関する相談件数が増えています。事業承継の問題は、子供がいないため後継者が見つからない、子供に継ぐ意思がない、あるいは子供に継がせたくないなどの要因による後継者難によって生じています。その場合の解決策としては、M&Aや経営統合となります。中小企業間における経営統合は、以前はなかなか難しい印象がありましたが、今は雇用を守りつつ、規模を大きくすることでマーケットシェアを確保しようと、業界を問わず動きが加速しています。
 しかし、本質的な解決策はビジネスモデルの転換や省人化への投資などにより生産性を引き上げ、この企業ならぜひ継ぎたいと思わせるような魅力的な事業を経営者がつくり上げることだと思います。

AIがもたらす変化

平田 現在、世界的に第4次産業革命の波が押し寄せ、日本においても既に始まっていると言われています。AIやIoTなどにより社会が変容するスピードは凄まじいものがありますね。
大久保 今でこそスマートフォン(スマホ)が当たり前の世の中になっていますが、これが爆発的に普及したのもここ10年のことです。スマホも、初期は携帯電話と超小型パソコンの機能を搭載したものでしたが、AIが搭載されたことにより、スマホ自体がパターンやトレンドを追跡・解釈し、学習するようになってきています。あるベンチャー企業の方に言わせると、この段階まで来ていればAIの進化は想像以上に早く、極端なことを言えば、スマホを人間型にしてロボットにするのもそう難しい話ではないということです。
平田 住宅で言えば、現在、AIスピーカーが注目を集めています。これらがIoTにより家電などとつながることもそう遠い未来の話ではなく、生活そのものがデータ化されていくことになります。それらを集約したビッグデータがAIとつながり、分析・学習することで、AIが更に進化していくことになるのだと思います。
 AIなどにより、今後の企業経営は、どのように変化していくとお考えでしょうか。
大久保 AIなどが普及することで企業経営にも大きな影響を及ぼすことが考えられます。金融業界においても、フィンテック(FinanceとTechnologyを組み合わせた造語。ICTを駆使した革新的な金融商品・サービスの潮流)の普及を目指し、金融庁が新法の策定を目指す方針を打ち出しています。これにより、金融機関の店舗や業務の効率化を促進させようというわけです。こうした動きは、金融業界のみならず、全ての業界において進んでいくでしょう。特に、日本人というのは真面目できめ細やかな気質から、新たな技術を導入するのに時間を要しますが、それぞれの業務に最適化するよう形を変えていく能力に長けていますから、導入が始まったら一気に普及すると思います。
 企業経営においても、AIによる変化はITによる過去20年の変化と比較して圧倒的なスピードになるでしょう。現在、人手不足の波がどの業界にも押し寄せている中で、経営者はそれぞれの業務を減らす、もしくは止めることを選択肢の一つとして決断を迫られる場面が生じています。しかし、経営者がこうした判断をすることは、その業務に従事している方々から仕事を奪うことになりますし、国を挙げて「働き方改革」「人づくり革命」が進められている今、大変な勇気を要します。
 削減や中止を考えていた業務をAIに代替させ、合理化を図るといったことは、全ての業界で急速に進んでいくと見ています。一方で、AIにより業務を合理化しても、人材がうまく活用できていなければ生産性はむしろ低くなる可能性もあります。経営者としてAIで代替した業務に従事していた人材をどう生かし、更なる付加価値の創造を図ることが重要となります。

2018年以降の展望

平田 2020年には東京オリンピック・パラリンピック競技大会が控えています。2020年以降の景気についてはどう見ていらっしゃいますか。
大久保 前回、1964年に開催した時は、開催に向けて「岩戸景気」、開催後は「いざなぎ景気」と呼ばれる好景気の時期がありました。今回も同様に、好景気が訪れるだろうと思います。しかし、前回と違うのは、岩戸景気やいざなぎ景気では建物や道路、橋など、景気の良さが目に見える形で現れていましたが、今回はAIやIoTなどの最新技術により合理化、省力化が図られ、目には見えない形で成長がもたらされる点です。特に、2020年以降は公共投資が減少すると見込まれますが、それを代替する役割としても、AIなどの新しい成長分野における投資が活発化していくだろうと思います。都市部でも地方でも、少子高齢化による人口減少は避けられるものではなく、日本が抱えるこうした構造的課題をどう補完しながらAIなどで代替していくか、その道筋がここ数年で見えてくるでしょうし、今年はその転換点になると考えています。
平田 これまで想像でしかなかった世界が現実のものとなっていくことに、大変わくわくしています。経営者にとっては、技術の進歩により広がる多大な可能性を生かしきれるかどうかが問われる、重要な1年となりそうです。
 弊社グループも変革の波を捉え、明るい未来に向けて、役職員一丸となって邁進する所存です。引き続きご指導の程よろしくお願いいたします。本日は誠にありがとうございました。