現在位置:
HOME > 木材・建材販売について > 情報誌「ナイスビジネスレポート」 > 2017年(平成29年) > 2/15号 > 新春2大イベント 特別パネルディスカッション 住宅業界の市況予測と各社の戦略【東京】
ナイスビジネスレポート

新春2大イベント 特別パネルディスカッション
住宅業界の市況予測と各社の戦略

  1月24日に福岡で行われた「新春賀詞交歓会」と1月27日に東京で行われた「新春経済講演会」では、住宅業界を代表するメーカー・商社の経営者の方々による特別パネルディスカッションが開催されました。今年は、ドナルド・トランプ新アメリカ大統領の就任が日本経済へも影響を及ばすと予想される中、日本経済及び世界経済の見通しや市況の動向、各社の戦略などが示されました。今回はその一部を収録してお送りします。


住宅着工戸数と日経平均株価の見通し


平田 新年の幕が明け、アメリカのトランプ新政権をはじめ、各国の動向などによる日本経済への影響や景気の先行きが関心どころとなっています。日本経済や世界経済の見通し、並びに今年の新設住宅着工戸数(暦年)と日経平均株価(年末)の予測についてお聞かせください。
井上 昨年から続く合板不足について、まずお詫び申し上げたく存じます。セイホクグループは当然ですが、全国の全ての合板メーカーがフル操業をしていますので、初夏には供給不足も緩和されると思います。
 日経平均株価は、出口を模索している米連邦準備制度理事会(FRB)も、金融緩和策を継続しているEUと日本もマネタリーベース(資金供給残高)は潤沢で、ドル建てで180ドルまでは上昇して1ドル130円へ円安が進むと、2万3,000円まで上がると考えています。住宅着工戸数は、相続税対策としての貸家需要が一巡し、88万戸程度に落ち着くと思います。
億田 住宅着工戸数は、持ち家が昨年と同程度、分譲一戸建住宅と貸家が一昨年と同程度で、マンションは年後半に復活すると見ており、93万戸と予測します。
 日経平均株価は、トランプ大統領がアメリカ第一主義を掲げていることから、輸出が促進されてドル安円高に向かうシナリオと、法人税の大幅減税などによりドル高円安に向かうという両端のシナリオが考えられます。正直なところ先が見えないのが実情ですが、年末の日経平均株価はドル建てで180ドル程度となり、2万2,000〜2万3,000円と見ています。
喜多村 現在の日本経済は、アメリカ経済や中国経済による影響が大きく、両国の動向や為替などによって日経平均株価は動くと考えています。中国経済については、今後、アメリカの対中国政策によって中長期で減速することも懸念されますが、現状としては生産能力の過剰感からGDPを押し下げている側面がある一方、中国国内の消費意欲は旺盛であり、しばらくは内需が強い状態が続くと見ています。
 日経平均株価は1万6,000〜2万1,000円の間で動くと予測します。住宅着工戸数は堅調な住宅取得意欲に支えられ、金利上昇を踏まえても90万戸は超え、92〜93万戸と見ています。
山中 昨年来の世界経済を俯瞰すると、グローバリズムに対する反発が非常に強くなっています。アメリカでは新興国の市場参入により労働者が職を失い、EUでは自由な人の移動の裏でテロの多発という弊害が起きています。これらに対する反発が、イギリスのEU離脱であり、アメリカのトランプ大統領の就任となって表れたと言えます。世界はこれまでとは異なる次元に突入しており、今後はグローバリズムでメリットを享受した国が逆に厳しい状況に陥っていくと考えられ、中国やドイツの情勢を注視する必要があります。
 日経平均株価は日本の政治的安定度の高さから円高に向かい、1万8,000円程度と見ています。住宅着工戸数は92〜93万戸と予測します。
村田 日本の住宅市場については、現在、首都圏を中心として10万uを超えるような大型の開発案件が動いており、更にディベロッパー様においても発表前の案件を多数抱えている状況にあることから、東京オリンピック・パラリンピック以降のいわゆる「2020年の崖」はないと考えています。建築費の高騰や職人不足の問題などの課題はあるものの、2020年以降の首都圏における建設需要は続くと見ており、これは地方にも良い影響が波及すると考えています。
 住宅着工戸数は、相続税対策としての貸家の着工が一巡して93万戸、日経平均株価は補正予算の成立をはじめ、国による政策効果もあり2万1,000円と予測します。
植木 1月1日より、三井住商建材鰍ニ丸紅建材鰍ェ事業統合し、新会社としてスタートしました。「S」は住友商事梶A「MB」は丸紅鰍ニ三井物産鰍表しており、3社が一つとなり更なる成長を遂げていくという思いから新社名を「SMB建材梶vといたしました。統合により人材の拡充を図るとともに、世界に広がるネットワークを活用した総合力と、お客様からの信用・信頼を基盤として、一層きめ細やかで付加価値の高いサービスの提供に努めていきます。
 中国経済は、海外に資本が流出して外貨準備高が大幅に減少しており、今後の動向を注視する必要があります。また、アメリカではトランプ大統領が保護主義的な政策を掲げていますが、世界的なグローバリズムの流れを一国で止めるのは難しいと見ています。
 日経平均株価は、トランプ大統領による積極的なインフラ投資への期待と大幅減税や規制緩和によりドル高円安が進み、2万2,000円程度にまで上昇した後、地政学的リスクやリバウンドにより年末には1万8,000円程度まで値を戻すと見ています。住宅着工戸数は92万戸と予測します。
須藤 ビルや大型マンションなどの大規模建築物については、現状、関東圏において東京を中心に再開発案件が出ているものの、生コンクリート工場や内装工事事業者の稼働率は例年と比べて高い水準にまでは至っていません。今後は、東京オリンピック・パラリンピック関連の動きが進む2018年後半から2019年が内装工事のピークとなると見ています。
 住宅着工戸数は、内閣府が今年に入って発表したレポートの中で、2016年以降、賃貸住宅の着工が潜在需要を上回り、供給過剰となる可能性が高いと警鐘を鳴らしています。貸家需要は一巡すると見ており、92〜93万戸と予測します。日経平均株価については、トランプ大統領の政策効果でアメリカ経済が好調に推移することにより、年末には2万円程度と見ています。
白井 昨年より瀬戸欣哉が鰍kIXILグループ並びに鰍kIXILのCEOとなり、日本市場を最優先した事業展開へと転換しています。日本市場は縮小傾向にあるものの、技術開発などメーカーのイノベーションによりまだまだ期待できると考えています。一方、職人不足は大きな問題であり、メーカーとしては省施工かつ短工期を可能とする商品を開発・供給するとともに、少子高齢化が進む中で新たな需要を創造していくことが求められていると考えています。
 日経平均株価については、トランプ大統領の動向による影響もありますが、これまでもアメリカ国民に日本の技術や商品が評価され、購買されている事実を踏まえると、結果として安定的に推移すると考えています。年末の終値は2万円と予測します。住宅着工戸数は、持ち家と分譲一戸建住宅が堅調に推移し、貸家とマンションが減少して94万戸と見ています。


クリーンウッド法への対応


平田 今年5月20日より「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律」(以下、クリーンウッド法)が施行され、民間取引においても合法伐採木材を利用する努力義務が課せられます。同法への対応についてお聞かせください。
井上 クリーンウッド法は、2001年のグリーン購入法と2010年に施行された公共建築物等木材利用促進法とともに、木材利用を促進するだけでなく、違法伐採された木や違法伐採の可能性を否定できない木でつくられた合板や製品を排除し、日本が環境先進国として仲間入りをするために必要な法律です。東京オリンピック・パラリンピックの木材調達方針やコンクリート型枠工事も対象とすべきであり、世界の環境保護団体も我が国の動向に注目しています。
 合板市場は国内生産量が52%となり21年ぶりに輸入量を上回りました。今後は東京オリンピック・パラリンピックに関わらず、構造用はもちろん型枠用も国産合板を使用していただきたく思います。
植木 クリーンウッド法については、パブリックコメントを経て間もなく省令が公布される予定であり、当社ではこれに基づき、環境対応型企業としてしっかりと対応していきます。また、国産材の利用促進に向けて、針葉樹合板の用途開発をメーカー様と一緒に進めていく方針であり、輸出についても併せて検討していきたいと考えています。
億田 MDFやインシュレーションボードなどの木質繊維板も、いずれはクリーンウッド法の対象となると考えられ、当社も繊維板メーカーとして対策を講じていく考えです。また、同法における努力義務の対象には住宅会社も含まれることから、罰則規定は設けられていないものの、業界全体で共通認識を持って取り組んでいくべき問題だと考えています。
 また、住宅業界では高齢化に伴う職人不足が深刻化しています。1995年には76万人だった大工の数は、2000年には65万人、2005年には54万人、2010年には40万人となっており、2020年には23万人にまで減少すると予測されています。住宅の生産性や品質の維持のために、業界全体で技術革新が必要です。メーカーとして省施工製品・工法の開発に積極的に取り組んでいきたいと考えています。


海外事業展開


平田 日本市場がシュリンクする中、海外における事業展開についてお聞かせください。
喜多村 中国や台湾で温水洗浄便座「ウォシュレット」が大変好調となっています。また、日本に滞在している海外の方にも大変好評で、一度体験していただければその良さを確実に実感できる商品だと思います。昨年の訪日観光客数は2,400万人を超えており、観光立国政策により更なる増加が期待されます。これらの方々が日本滞在中にホテルなどで使っていただいた結果、高い評価を得ており、アメリカでもハワイや西海岸などの地域を中心に需要が高まり、有望な市場となっています。
 当社では、海外市場においてもTOTOならではの良質な商品を提供するとともに、アフターサービスや保証など、ご購入後も日本と変わらないサポートを提供し、お客様に安心して使っていただける環境を整えてまいります。
山中 当社では、2007年にアメリカ・ジョージア州に生産拠点を設け、市場への供給を行っています。アメリカでは雇用の伸びや賃金の上昇、低金利などにより、新築と中古販売ともに住宅市場が堅調に推移しています。これに支えられ、サイディング需要が伸びており、当社事業もおかげ様で軌道に乗って好調となっています。
 アメリカ市場における今後の懸念材料としては、金利の上昇が挙げられます。トランプ政権の成立後、長期金利が急騰しています。長期金利が3%を超えると住宅や自動車などの販売に大きな影響が出るとされ、今後の金利動向を注視していきます。
須藤 当社は2014年よりインドネシアで販売を開始しており、ジャカルタ近郊で今春に工場を着工する予定です。インドネシアは世界最大のイスラム教徒国で、ラマダン(断食月)やレバラン(断食明け大祭)などの経済活動に影響のある期間を有していますが、来夏には製品の出荷を始めたいと考えています。石膏ボードは現地生産、現地販売が基本であり、一歩一歩着実に、現地のマーケットを開拓していきます。


太陽光発電市場・リフォーム市場


平田 「住宅ストック循環支援事業」や「長期優良住宅化リフォーム推進事業」など、今年はリフォーム関連施策が手厚く講じられています。一方、太陽光発電市場は売電価格の低下などにより縮小傾向にあります。これらの市場についてはいかがでしょうか。
白井 昨年10月より新プロジェクト「リクシルPATTOリフォーム大作戦」をスタートしました。これは、50万円以下の小規模リフォーム需要に対し、お施主様がリフォームしやすい環境を整え、流通店様や施工店様と一緒になって「簡単・早い・明朗」でお応えするサービスです。現在、サービスショップとして全国約3,000社にご加盟いただいており、第1弾として防音・断熱内窓「インプラス」やリフォーム玄関ドア「リシェント」を対象に展開しています。
 リフォーム事業は長期的な目線を持って取り組むべき事業であり、同プロジェクトを通じてお施主様の満足度を高めることで、新たなリフォーム市場を創造し、新築需要の縮小に対する策を講じていきます。
村田 昨年4月に始動した「パナソニックリフォーム」の取組により、加盟店様の受注件数も伸長し、ショウルームへの昨年の来場者数も前年比106%となるなど成果が表れてきています。
 太陽光発電市場は全体では縮小していますが、新築一戸建住宅におけるニーズは広がりを見せています。住宅用の太陽光発電システムは、2019年より買取価格期間が終了する住宅が出てくるため、今後は使い方が投資目的から自己消費へと変化し、蓄電池の需要が一気に高まってくると考えています。また、国がZEHの標準化を目標に掲げたことも追い風となります。昨年末には太陽光パネル事業でテスラモーターズ社と提携しました。今夏には同社アメリカ工場で生産を開始する予定で、相乗効果を発揮して取り組んでいきます。


今年の戦略と注目商品


平田 注目商品を含め、今年の戦略と方針についてお聞かせください。
井上 昨年、森林林業基本計画において「2025年までに木材自給率50%」という目標が掲げられました。年間の木材需要8,000万m3のうち4,000万m3を国産材とする必要があり、合板業界で600万m3を賄うことが求められています。
 当社グループではこれまで、「(A)あらゆるところに(K)国産材(G)合板を使用して木材自給率50%」を達成するべく「AKG50」をキャッチフレーズに掲げてきました。これが昨年、合板の自給率が50%を超えたことから、今後は更に国産比率を上げ、輸入比率を35%に抑えるべく、「(A)あれ?(K)これまだ(Y)輸入合板?」という意味を込め、新たに「AKY35」をキャッチフレーズに、国産合板の普及拡大に一層努めていきます。
億田 リフォーム市場、非住宅市場の開拓を積極的に進めていきます。昨年発売した「吸着フローリング」は、カッターで容易にカットでき、釘や接着剤を使わず施工できるので、リフォームや賃貸物件の原状回復に最適です。また、幼稚園・保育施設向けドア「おもいやりキッズドア」や、不燃壁材「GRAVIO」にも、ぜひ、ご注目いただきたいと思います。
 リフォーム市場、非住宅市場の開拓を積極的に進めていきます。昨年発売した「吸着フローリング」は、カッターで容易にカットでき、釘や接着剤を使わず施工できるので、リフォームや賃貸物件の原状回復に最適です。また、幼稚園・保育施設向けドア「おもいやりキッズドア」や、不燃壁材「GRAVIO」にも、ぜひ、ご注目いただきたいと思います。
喜多村 独自で開発したクリーン技術「きれい除菌水」をトイレ以外の商品でも展開しています。システムキッチン「ザ・クラッソ」では「きれい除菌水」を振り掛けることで、まな板や包丁、ふきん、排水溝の網かごを清潔に保つとともに、家事の手間の削減にも貢献します。また、洗面化粧台「オクターブ」にも「きれい除菌水」を搭載し、好評いただいています。
 当社は今年5月で創立100周年を迎えます。販売店様や工務店様などパートナー各社に感謝するとともに、今後も技術の革新を通じてお客様から選ばれる商品づくりに努め、快適な水回り空間を提供していきます。
山中 次世代外装材「フュージェ」が大変ご好評いただいています。これは、超高耐候塗料「プラチナコート」を採用し、継ぎ目にシーリング目地が入らない「四方合じゃくり」仕様としており、仕上がりの美しさと耐久性の実現に加え、メンテナンスコストの圧縮にも貢献する商品です。また、昨年発売し、鏡面仕上げの「ミライア」と多彩なカラーバリエーションの「メモリア」を展開する新内外壁材「COOL」については、多岐に渡ってご使用され始めており、今後はそれらを踏まえて更なる商品設計をしていく考えです。
村田 今年は全自動おそうじトイレ「アラウーノ」が発売10周年を迎えます。これを記念して10色をラインアップしました。また、2月には背面スペースに手洗いと収納を確保した新タイプを販売します。手洗い付きトイレからの交換の際、タンクレストイレの設置が困難な現場でも対応が可能となります。
 また、拡大が見込まれる非戸建て市場では、ナイスさんと一緒に取り組んでいる耐震工法「テクノストラクチャー」について1棟ごとでの取り扱いを可能としました。同工法は今夏より最大15mスパンの大空間も実現でき、当社の介護事業「エイジフリー事業」との連携なども含め、普及に向けて積極的に取り組んでいきます。
植木 昨年、山形県鶴岡市で着工した日本初の木造3階建て校舎の建設に携わり、CLTも一部使用しました。また、都市部における建築物の木造化に対応するべく、1時間の耐火性能を確保し、構造部材として現しで利用可能な集成材を開発しました。
 当社では施工管理技士や建築士の資格を持つ社員が100人以上在籍しており、設計力や施工力といった強みを生かして、今後も国産材利用の促進に向けて、オリジナルの木質二方向ラーメン構造「サミットHR工法」をはじめ、非住宅市場に積極的に取り組んでいきます。
 また、新会社として取り扱い商品の拡大など事業統合による相乗効果を発揮し、リフォーム市場や海外市場にも注力していきたいと考えています。
須藤 都市の木造化に向けては、木造耐火構造もしくは木造準耐火構造への対応が必要となってきます。当社の強化せっこうボード「タイガーボード・タイプZ」や防水性と防カビ性を加えた「タイガーボード・タイプZ−WR」の21o厚や25o厚を複合的に用いることで、木造による耐火構造も可能となります。
 また、賃貸住宅市場においては、騒音対策として木造床遮音工法「タイガー遮音フロアシステム」を用意しています。使用する硬質せっこうボード「タイガースーパーハード」は比重が通常の2倍となっており、弾性の高い接着剤を用いて複数層重ねることで、重量・軽量どちらの衝撃音についても遮音性を高めています。
 これらの製品を通じて、木造の新規需要にしっかり対応していきたいと考えています。
白井 先程申し上げた通り、開口部の断熱リフォームにおいては内窓「インプラス」を設置していただき、更に加えて、一部屋ごとに行う断熱リフォームとして、真空断熱材を用いた壁パネル・床パネル「ココエコ」をプラスすることで、より相乗的な効果を高めることが可能です。「ココエコ」を脱衣室やトイレに施工することで、居室間の温度差をなくし、ヒートショックによる被害を少しでも減らしていくことも、メーカーの重要な使命であると考えており、引き続き取り組んでいきます。
 併せて、今年はZEH化に向けて新築市場にも注力し、省エネ製品の普及に努めていく方針です。
平田 今年は、世界経済の先行きは不透明ではあるものの、日本の景気は明るいという見方が大勢となり、期待できる一年になると予想されます。本日は誠にありがとうございました。