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南海トラフ巨大地震 住宅の耐震化で被害が激減 耐震改修で命を守る住まいづくりを応援する

 東日本大震災では、それまでに想定されていた災害の概念をはるかに超える甚大な被害によって、広範囲において多くの尊い命が奪われました。さらに、近い将来に発生が懸念されている南海トラフ巨大地震では、より広域な範囲において東日本大震災を上回る被害想定が発表されています。首都直下地震の発生も危ぶまれるなか、被害軽減に向けた最重要課題の一つが住宅・建築物の耐震化であり、減災に向けた取り組みは、地域に密着して活動する工務店様の使命とも言えます。今回は、耐震診断および耐震改修にまつわる動向についてまとめました。

住宅の耐震化・防災対策は急務

 東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)から2年、被災地における復興のスピードや内容に格差も散見されるなか、3月18日に内閣府より発表された「南海トラフ巨大地震の被害想定(第2次報告)」では、最大級の巨大地震の場合、全国で約182万棟の建物が全壊や焼失するとされました。
 その原因別内訳は、揺れが約134万棟、地震火災が約19万棟、津波が約14万棟、液状化が約13万棟と、70%以上が揺れによるものです。死者は最悪の想定で32万3,000人、避難者は950万人と、東日本大震災を上回る甚大な規模が示され、建物や資産などの直接的な被害は、東日本大震災の10倍におよぶ169兆円5,000億円と推計されました。
 政府の中央防災会議作業部会では防災対策の抜本的な強化を唱えており、耐震化率を100%に向上させ、防災対策などを併せて講じれば、最悪のケースの直接的被害は半減するという試算を明らかにしました。そして、改めて建物の耐震化が急務と警告しています。
 また、東京都が昨年4月に発表した首都直下地震の被害想定では、東京都における建物全壊が約20万棟、建物焼失は65万棟、死者は約11,000人、経済被害は112兆円と、甚大な被害規模が想定されています。
 昨年11月に東京都が決定した地域防災計画では、2020年時点での住宅の耐震化率を、従来目標である81%から95%に引き上げることによって、全壊・焼失建物、ならびに死者の想定を6割減とする新たな目標が示されました。ここでも、南海トラフ巨大地震と同様に、建物の耐震化は最重要課題の一つと位置付けられています。

高まるエンドユーザーの意識

 日本木造住宅耐震補強事業者協同組合(以下、木耐協)によると、2010年の耐震診断受診件数は4,855件でしたが、東日本大震災以降、その件数は増加し、2012年については5,940件となっています(図1参照)。

木耐協における耐震診断受診件数

 3月6日に木耐協が発表した「耐震診断受診者の意識に関する調査データ」によると、東日本大震災以降の地震に対する意識の変化に関する問いについて、「以前より地震に敏感になった」との回答した人が83%にのぼり、「変わらない」が12%、「地震に慣れた」が4%という結果でした。
 また、「阪神淡路大震災や東日本大震災クラスの地震に、自分が遭うと思うか」の問いに対しては、全体の69%の人が「遭うと思う」と回答し、2008年の同調査結果である59%から割合が増加し、地震災害を自分の問題としてとらえている人が増えていることが分かりました。
 さらに、「東日本大震災以降、自分や家族の間で何か具体的に行ったことはあるか」の問いに対しては、90%を超える人が地震に対する何らかの対策を行っていると回答しています(図2参照)。そのなかで最も多かったのが「家具の転倒防止」で45%、次いで「防災・避難グッズを用意」「食料備蓄」「近所の緊急避難所を確認」など、地震後の備えを意識した対策が上位となっています。地震発生前の備えである「耐震補強工事の実施」は24%であることから、さらなる推進が必要であると言えます。

東日本大震災以降、自分やご家族の間で何か具体的に行ったことはありますか?

施策による改修促進があと押しに

 政府による耐震化に向けた取り組みは、阪神・淡路大震災を契機に1995年に施行された「耐震改修促進法」により開始されました。その後、2005年に中央防災会議が策定した「地震防災戦略」において、住宅・建築物の耐震化率を2015年までに90%、2020年に95%とする目標が設定されました。また、「耐震改修促進法」が改正され、耐震化緊急支援事業や地方自治体における補助制度の整備など、耐震化率向上に向けた取り組みが進んでいます。
 その結果、全国の地方公共団体が実施する補助制度は年々拡充されており、2012年4月現在で、一戸建住宅の耐震診断への補助制度の実施率が78.2%、耐震改修への補助制度の実施率が72.9%と、調査開始時である2006年時点より大幅に上昇しています(下図3参照)。

全国の地方公共団体における耐震診断に

今年度の補助制度は拡充へ

 「耐震改修促進法」は今年さらに改正される予定で、旧耐震基準で建てられた建築物で、不特定多数の者が利用する大規模建築物や、地方公共団体が指定する避難路沿道建築物などについて、耐震診断が義務化され、結果に応じて耐震改修が指示されることになります(改正内容については、本紙2013年3月15日号に掲載)。
 法改正に合わせて、支援措置についても拡充が打ち出されており、先日成立した2012年度補正予算においては「住宅の改修・建替えなどに対する緊急支援」が盛り込まれました。住宅改修などへの支援が、従来制度(国11.5%+地方11.5%)に加え、一戸あたり30万円が追加支援されます(すでに23%を上回る補助率の自治体は適用外の場合もあります)。  また、現在、国会にて審議中の2013年度予算案においては、耐震診断の義務付け対象建築物に対する重点的・緊急的支援として「耐震対策緊急促進事業の創設」が盛り込まれており、大規模の特定建築物をはじめ、地方自治体が指定する「密集市街地」や「津波浸水区域などの避難路沿道」の住宅に対する耐震改修・建て替えの補助制度が新たに開始される予定です。
 そのほか、耐震改修にかかる費用の一定額が税額控除できる制度や、固定資産税の軽減措置も延長が決まるなど、エンドユーザーにとっては、耐震化を実行する条件がそろっています。

補助制度の周知は住宅業界の使命

 国および地方自治体によって整備が進む支援制度ですが、エンドユーザーへの周知には課題が残されています。国土交通省の調査によると、耐震診断と耐震改修の実施に当たり、補助制度を活用しなかった最大の理由としては、補助制度があることを知らなかったことが最も多く挙げられています(上図4参照)。
 このように、私たち住宅関連業界においては、一人でも多くのエンドユーザーへ住宅の耐震化の重要性を正しく伝え、耐震化率の向上に努めることが、今後起こりうる大規模震災での減災に向けた使命と言えます。

補助制度等を活用しなかった理由

NPO法人 住まいの構造改革推進協会

 NPO法人住まいの構造改革推進協会(以下、住構協)は、「阪神・淡路大震災の悲劇を二度と繰り返してはならない」という思いのもと、2003年の設立以降、木造住宅の耐震化率向上を目的に、耐震事業に取り組もうとする工務店様を知識面や技術面、営業面から販売店様およびメーカー様と一緒になってサポートしてきました。
  活動をスタートしてから10年目を迎え、会員様のなかにはさらなる展開として、住構協で得た知識と技術を基本に、自社で耐震事業の基礎を築き、販売店様と工務店様が組織化して活動する事例が全国に拡大しています。このように、より地域に密着した形での耐震事業への取り組みが各地で進んでいます。

住構協の耐震博覧会での取り組み

 住構協は、会員様と一緒になって、2月に東京ビッグサイトで開催された「住まいの耐震博覧会2013・春」において、耐震基準や耐震補強についての展示に加え、エンドユーザー向けの相談コーナーを設置しました。そこでは、例年以上に多くのエンドユーザーが、具体的な耐震部材の展示や施工実演などを真剣に確認する光景が見受けられました。住構協の会員様でも「住まいの耐震博覧会」による問い合わせから、実際の受注につながるなど、エンドユーザーの耐震への高い意識が具現化するなかで、しっかりとニーズに応える体制が求められます。

耐震コーナーは多くのエンドユーザーで賑わった

NPO法人 住まいの構造改革推進協会の概要

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