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その時どうする!! 巨大地震・津波への対応

 東日本大震災では、甚大な津波被害によって多くの尊い命が奪われました。さらに、近い将来に発生が危ぶまれている首都直下地震や南海トラフ巨大地震においても、津波災害が起こると予測されています。こうしたなか、「住まいの耐震博覧会」において2月10日、名古屋大学大学院の川崎浩司准教授より、いつ起きてもおかしくない巨大地震とそれに伴う津波への心構えに関する講演が行われました。今回は、特集「東日本大震災から2年」の第1弾として、本講演内容をまとめました。

川崎 浩司 氏

津波とは何か

 津波の「津」とは「港」という意味であり、もともとは「港を急に襲う大波」が語源ですが、現在では「急に沿岸部を襲う大波」と定義することができます。普段、皆さんが海で目にしている平常時の波というのは、数秒から数十秒の周期で大きくなったり小さくなったりしていますが、津波は5分から12時間という非常に長い周期の波を指します。東日本大震災では、約30分の周期で大きくなったり小さくなったりしました。周期が長いということは波の長さも非常に長く、一般的には数十キロメートルから数百キロメートルにわたると言われています。例えば、直線距離でおよそ260キロメートルある東京から名古屋までが一つの波になっているのです。つまり、津波とは、「波」と聞いて皆さんがイメージするようなアップダウンのあるものではなく、水の塊が一気に襲ってくるという感覚であり、その破壊力は甚大です。

津波発生のメカニズム

 津波は、海溝型地震によって海底面が隆起・沈降することで発生します。地震以外に、火山噴火や海底地すべり、沿岸域における崖崩れ、隕石の落下なども津波発生の原因となりますが、過去200年を振り返っても、約9割が海溝型地震によるものです。
 プレートには大陸プレートと海洋プレートがあり、そして地殻と核の中間にあるマントルは循環しています。海洋プレートは大陸プレートよりも強固で密度が高いため、マントルの循環によって大陸プレートの下にどんどん引きずり込まれていきます(図1)。場所にもよりますが、年間でだいたい5センチ程度、大きいところでは7〜8センチほど沈み込みます。海洋プレートが引きずり込まれることで大陸プレートも沈み込み、トラフや海溝と呼ばれるような、水深の深いところが形成されていきます。そして、あるきっかけで大陸プレートが元に戻ろうとし、それによって大きな地震が引き起こされるのです。これが、海溝型地震と呼ばれるものです。
 日本は、フィリピン海プレートおよび太平洋プレートの2つの海洋プレートと、北米プレートおよびユーラシアプレートの2つの大陸プレートの上に乗っている小さな島国です(図2)。つまり、日本は地震が起きて当たり前の国であり、地震から免れることは決してできないのです。今一度、地震に対してしっかりと備えるべきであることを、日本に住むすべての人々に認識していただきたいと思います。

海溝型地震による津波の発生機構

日本周辺のプレート

津波情報の出され方

 地震が発生すると、気象庁は、全国に設置された地震計から構成される地震観測網データを用いて、発生から数分程度で震源とマグニチュード(以下、M)を確定します。しかし、津波の予想については、それから計算していては津波警報の発表が津波到達までに間に合わないので、10万通り以上のデータを持つ「津波予想データベース」のなかから、発生した地震に最も近いケースを検索し、津波の高さと到達時間の予測を割り出します。そのうえで、「大津波警報」「津波警報」「津波注意報」を発表します。
 なお、気象庁は、東日本大震災の教訓から、今年3月7日より津波情報の発表方法を変更しました(図3)。通常の場合は、警報とともに予想される津波の高さを「1メートル」「3メートル」「5メートル」「10メートル」「10メートル超」の5段階数値で発表します。しかし、M8を超えるような巨大地震の場合には、すぐに高い精度で地震の規模を求めることはできないため、その海域における最大の津波想定などをもとに津波情報を発表します。その場合、最初に発表する大津波警報や津波警報では、予想される津波の高さを「巨大」や「高い」という言葉で発表し、非常事態であることを伝えます。その後、地震の規模が求められた時点で津波情報を更新し、予想される津波の高さも数値で発表します。津波から身を守るために、こうした動向についても、ぜひ注視していただきたいと思います。

新しい発表基準

津波用語を正しく知る

 昨年、国は南海トラフの巨大地震による震度分布・津波高などの被害想定を発表しましたが、ここで言われている「津波高」とは具体的に何を意味しているのかを正しく理解することが重要です(図4)。例えば、「高さ2メートルの津波」と言った場合、それは今の海面から2メートル盛り上がる可能性があるということです。一方、天気予報の波浪情報で「波の高さ2メートル」と言った場合は、今の海面からプラスマイナス1メートルという意味であり、一般の波と津波では、そもそも定義が異なります。もちろん、言うまでもなく破壊力も全く違います。さらに、同じ津波の高さでも、満潮時か干潮時かによっても被害の大きさは異なります。干潮時には被害が出なかったとしても、満潮時に重なれば大きな被害が出ることは、十分にあり得ます。つまり、津波の高さだけでなく、そのときの潮位がどのような状況であるかを知ることも重要です。気象庁もメディアも、津波情報と併せて潮位の状況についても伝えているので、しっかりと情報を得てください。
 また、行政では、津波や高潮、河川のはんらんなどに関するハザードマップを出していますが、そこに示されている数字は「浸水深」というもので、地盤から何メートルの高さまで水が浸かるかということを表したものです。

津波用語

津波の威力

 津波の速度はとても速く、1960年と2010年に日本の反対側にあるチリで発生した地震に伴う津波が、たった1日で日本に到達するほどです(図5)。とくに、水深が深ければ深いほどその速度は速くなり、水深5,000メートルの海上だとその速度はジェット機並みの時速800キロメートルにおよびます。逆に、水深が浅くなってくると前に進みづらくなり、水深10メートルでの速度は時速36キロメートル程度となりますが、その分、波の高さは高くなります。もちろん、時速36キロメートルと言ってもこれは100メートルを10秒で走る短距離選手と同じスピードであり、時速7〜12キロメートルの私たち一般人が沿岸部で津波を見てから高台へ逃げることは、どう頑張っても無理なのです。東日本大震災では、津波到達まで早いところで30分だったと言われていますが、南海トラフの巨大地震の被害想定によれば、静岡県や和歌山県、高知県など、場所によっては地震発生直後に津波が到達すると予測されており、沿岸部で大きな地震を感じたら、すぐに逃げる必要があります。

津波の伝播速度


 では、実際に2メートルの津波が建物を襲ったとき、一体どのようなことが起こるでしょうか。多くの方が、2メートルの水に建物が浸かるというイメージを持っていると思います。しかし、実際には水の塊は壁にぶち当たり、4〜6メートルの高さまで跳ね上がります。つまり、2メートルの津波の高さだからといって、2階に逃げれば大丈夫というわけではないのです。
 次に、ひざの高さに当たる約50センチの津波に襲われたとき、私たち人間はどうなるでしょうか。実は、たった50センチの津波でも、私たちは立っていることができません。人間どころか、車や沿岸部にある空のコンテナさえも流れ出すほど、非常に危険な状態なのです。津波に対するイメージとしては「波」ではなく、「急流」という感覚のほうが近いと言えます。実際には、50センチ程度の津波であれば、防波堤や防潮堤、水門などによって防げますが、万一、地震の強い揺れによって防波堤などが破壊され、足元に津波が流れ出て来たときには、すでに危険な状態にあるのです。

首都直下地震と南海トラフ地震に備える

 地震対策を考えるに当たっては、まず自分が住んでいる地域で過去にどのような地震が起きたかを学んでおくことが大切です。
 現在、首都直下地震は30年以内にM7クラスの規模のものが70%程度の確率で発生すると言われています。その根拠は、過去の歴史にもとづきます(図6)。1703年、M8クラスの元禄関東地震が発生し、1923年にはM7.9の関東地震(関東大震災)が発生しています。この2つの地震の間隔は約200年で、このサイクルから考えると、関東地震から約200年後の2100年ごろにはM8クラスの地震が起きるのではないかと予測されます。しかし、図6を見てみると、関東地震および元禄関東地震の前にはM7クラスの地震が何度か起きており、その結果としてM8クラスの地震が発生していると考えられています。つまり、M8クラスの地震の発生は2100年以降かもしれませんが、その前にM7クラスの地震が近々起こるのではないかと言われており、とくに都心部に被害をもたらす地震として、東京湾北部地震の発生が懸念されています。また、首都直下地震における津波被害については、中央防災会議による2003〜2005年の想定では、東京湾内で50センチ、高いところでも相模湾で2メートル未満とされています。しかし、非常に大きな地震となるため、堤防が壊れないという保証はどこにもありません。大きな揺れによって堤防が壊れてしまえば、50センチの津波でさえ私たちの命を奪いかねないのです。
 南海トラフの巨大地震についても、過去に起きた地震がどのようなものだったのかをしっかりと学んでいただきたいと思います(図7)。1498年には東海・東南海の2つのエリアで明応東海地震(推定M8.3)が起きました。非常に大きな地震で、これにより浜名湖と太平洋が現在のようにつながったと言われています。そして、1605年の慶長地震(M7.9)および1707年の宝永地震(M8.4)は3連動型の地震でした。1854年には安政東海地震(M8.4)が東海・東南海の2つのエリアで発生し、その32時間後には安政南海地震(M8.4)が南海エリアで発生しました。その後、1944年に昭和東南海地震(M7.9)が起こり、2年後の1946年には昭和南海地震(M8.0)が発生しました。図7を見てみると、東海地震については、前回発生した安政東海地震から約160年が経過しており、今後30年以内での発生確率は88%(参考値)と言われています。
 この「参考値」ですが、私たちの知りうる範囲では、これまでに東海地震は単独では発生しておらず、「この間隔で、もし単独で東海地震が発生するならば、30年以内に発生する確率は88%」という意味です。逆に言えば、過去500年を見てみると、今、東海地震が起きるとすれば、それは東海・東南海、あるいは東海・東南海・南海の連動型地震になると思われます。さらに、昭和東南海地震および昭和南海地震から、すでに約70年が経過しているため、近い将来に大地震の発生が危ぶまれています。
 なお、それぞれの地震被害の想定については、今後も研究が続けられると思われます。ぜひ、自ら情報を入手するように心がけてください。

南関東で発生した地震

東海・東南海・南海連動型地震

迅速な避難には、 耐震化と家具固定が大前提

 津波から尊い命を守るためには、何よりもまず、家具の固定や住宅の耐震化などの地震対策を万全にしておくことが大前提であるということをしっかりと認識していただきたいと思います。
 昨年、国が発表した南海トラフ巨大地震の被害想定によると、地震の規模はM9程度、被害予測も従来のものから大きく拡大されました。これは、科学的知見にもとづくものであり、今後起こり得る最大級の地震であると同時に、私たちが知り得る範囲では一度も経験したことのないほどの巨大な地震となります。先述の通り、この被害想定では、場所によっては地震発生直後に津波が到達するところもあり、強い揺れを感じたらすぐに逃げなければ助かることはできません。一方、建物や家具の下敷きになれば、その時点で命を落としてしまうかもしれないのです。
 最後に、戦前の物理学者であり随筆家の寺田寅彦氏の名言に「自然は過去の習慣に忠実である。それゆえに、災害は忘れたころにやってくる」というのがあります。今の時代に生きる私たちは、この言葉を「災害は必ずやってくる」に換えて念頭に置いておく必要があります。4つのプレートの上に乗っている日本に住む私たちは、決して地震から目をそらすことはできません。必ずやってくる地震と向き合い、自分に何ができるのか、何をしなければならないのかを、常に考えておくことが重要です。

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