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ナイスビジネスレポート

特別対談 〜「東日本大震災後」を読み解く〜 住まいづくりはどう変わるか

 東日本大震災により、日本経済や日本企業、そして住まいづくりは大きな転換点を迎えています。これからの経営はどうあるべきか、また住まいづくりはどう変わっていくのかをテーマに、パナソニック電工(株)井戸正弘専務とナイス(株)平田恒一郎社長との対談をお送りします。

日本経済を取り巻く「5重苦」

パナソニック電工(株)井戸正弘氏 平田 東日本大震災の発生から4ヵ月半が経ちました。厳しい情勢が続いていた日本経済において、さらなる打撃となりましたが、この現状をどうとらえておられますか。
井戸 日本経済は国際競争の観点において、@円高、A高い法人税率、B自由貿易協定(FTA)交渉の遅れ、C労働規制、D温室効果ガス排出規制の「5重苦」にあるのはご存知の通りです。
 為替レートは、7月26日には一時1ドル77円台にまで上昇しました。東日本大震災直後にも迫る勢いで円高が進んでおり、日本経済への重い足かせとなっています。法人税については、経済産業省が2010年に示した「産業構造ビジョン」にある通り、国際水準と比較して非常に高い税率となっており、これでは企業が国際競争力を発揮するのは非常に難しいところです。さらに、 本は自由貿易協定(FTA)の締結交渉でも遅れを取っています。7月1日には韓国・EU間のFTAが発効されましたが、政府は「第3の開国」と言われる環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉への参加の判断を先送りしており、これが日本企業にとって大打撃となっています。また、高い賃金や温室効果ガス排出量の削減義務なども企業には重荷となっており、これに東日本大震災による電力不足を加えると、日本経済は「6重苦」とも言える状況にあります。
 日本企業は今まさに、「今後の経営をどうすべきか」という課題を突き付けられているのです。
平田 今回の大震災により表面化したサプライチェーンの問題や政治の停滞が、企業経営にさらなる追い打ちをかけていますね。
井戸 この影響で企業の海外移転がますます進む可能性があります。7月15日付の日本経済新聞には、「『社長100人アンケート』で、 約4割の経営者が円高の是正や税制の見直しが進まなければ3年以内に海外へ生産拠点などを移さざるを得ないと回答した」というショッキングな記事が掲載されました。このままでは、産業の空洞化がさらに進み、所得の減少に伴って、さらにデフレが進むことも否定できません。
平田 日本企業を取り巻く環境は依然として厳しく、私たちは経営の考え方を根本から変える必要を迫られていると感じます。しかし、被災地、そして日本全体のことを考え、「必ず甦る」という強い意志を持って、復興を遂げていかなければなりませんね。

住宅産業の「5重のショック」

パナソニック電工(株)井戸正弘取締役と平田社長 平田 震災により、 住宅業界にはどのような影響があったと分析されますか。
井戸 @資材ショック、A電力・原発ショック、B地盤ショック、Cマインドショック、D経営ショックという「5重のショック」があったと認識しています。
 震災で建築資材メーカーの東北地方の生産拠点が被災し、一時、資材不足の状況が発生しました。 これにより、メーカーやサプライヤーは資材価格を上げざるを得ない状況となり、販売店様や工務店様にもご心配をおかけすることにもなりました。
 こうした状況のなかで、被災地では、沿岸部は津波対策を施した漁業関係の拠点のみとし、住居などは高台に移転させるという「職住分離型」の街づくりを行う方向で検討が行われています。パナソニックグループでは神奈川県藤沢市に「フジサワ・サスティナブル・スマートタウン」を建設予定です。これは、パナソニック(株)の藤沢工場跡地約19ヘクタールに建設する環境配慮型都市で、太陽光発電システムや蓄電池を全戸に導入、電気自動車やプラグインハイブリッド自動車向けの充電インフラも整備され、街全体でCO2削減70%を目指しています。2013年度に街開きし、2018年には1,000世帯、3,000人の街になる予定です。この取り組みは、被災地の新しい街づくりにも必ず生かされるでしょう。
平田 被災地では今、地元の工務店様が住宅の修繕需要の対応に追われている一方で、大手ハウスメーカーやパワービルダーは、徐々に起こりつつある新築需要を獲得しようと動き出してきています。そのようななか、当社では、低価格かつ長期優良住宅を超える高い基本性能を持つ一戸建住宅商品「パワーホーム」をもとに、東北地方の復興に向けた「フェニーチェ・ホーム」を開発しました。被災地の販売店様や工務店様と一緒になって「フェニーチェ・ホーム」の販売に取り組んでいくことで、安全・安心な家を被災者にご提供するとともに、地域産業を応援し、活性化につなげていけるよう、仕組みを構築しているところです。
井戸 住宅業界における2つ目のショックは電力・原発ショックです。今夏は電力使用制限令が発令され、加えて13ヵ月ごとに行われる定期検査に伴い、来春には全国54基の原子炉すべてが停止する可能性も出ています。その一方で、例えばエアコンの使用を減らすために家庭で揚げ物をしないようにするなど、節電を意識して個人の消費行動にも変化が出ています。こうした変化に、私たちはどう対応していくべきかを考えなければなりません。住宅設備メーカーとしては、節電商品の普及拡大が重要だと認識しています。家電が自ら無駄を見つけて節電する「エコナビ」を搭載したエアコンや温水暖房便座、消費電力の小さいLED照明などの普及を、業界の先頭に立って進めてまいります。
 3つ目は地盤ショックです。各地で液状化が起こったことを受けて、これから家を建てようとする消費者が、図書館に通って積極的に土地の過去の状況を調べているそうです。今まで関心の高くなかった「土地の質」、すなわち「住めない土地」「住んではいけない土地」を知ることが、一般消費者のなかに広がっているのです。
平田 当社が6月に名古屋で開催した「住まいの耐震博覧会」では、ナイスサポートセンターのブースにおいて、ジャパンホームシールド(株)の協力のもと、全国の地盤の状況を確認できるデモ検索サービスを行いました。これには、来場されたエンドユーザーの方から高い関心が寄せられ、常に人だかりが絶えない状況となりました。今回の震災を受けて、建物だけでなく地盤に対する意識が非常に強くなっていると感じます。
井戸 4つ目はマインドショックです。震災後、「大家族への回帰」や「結婚ブーム」が社会現象として起きています。あるハウスメーカーでは、今年度の相続税改正の対策として二世帯住宅商品をアピールしていましたが、震災後から問い合わせが急増しているそうです。また、別のハウスメーカーでも、東北地方における二世帯住宅の販売比率が、通常の2割程度に対し、4月は3割強まで増えたということです。
 そして、5つ目は経営ショックです。 回の震災による資金繰りの悪化もさることながら、消費税率を2010年代半ばまでに段階的とはいえ10%まで引き上げるという議論がされており、実施されれば住宅業界にも大きな影響が出ることは間違いありません。
平田 東日本大震災のショックにより、住宅業界はこれまで以上にさまざまな角度から大きな転換を迫られていると言えます。この転換にしっかりと対応していくことが、今後の住宅業界を生き残るためには重要であり、急務となってくるということですね。

「創・蓄エネルギー時代」の到来へ

平田 東日本大震災後のこれからの家づくりは、どう変わっていくとお考えでしょうか。
井戸 優先順位が大きく変わり、これからは間違いなく「エネルギー」が家づくりの最優先事項になっていくでしょう。現状では、エネルギーに対するエンドユーザーの関心は節電や節水といった「省エネ」に重点が置かれていますが、中期的には太陽光発電システムをはじめとする「創エネ」へ、そして長期的にはつくったエネルギーを貯めて使う「創・蓄エネ」へと移行し、エネルギーが設備選定の入り口になると考えています。
平田 菅直人首相が5月のG8(主要国首脳会議)で「約1,000万戸の住宅に太陽光発電システムを設置する」という意向を示すなど、脱原発や自然エネルギーへのシフトについて、国民的議論が巻き起こっています。エンドユーザーのエネルギーへの関心は一層高まってきていますね。
井戸 今回の電力供給不足問題により、電力の安定供給神話が崩壊したという人もいます。今後は電力を電力会社から買い取って使うという受け身の立場ではなく、自然エネルギーの徹底活用を図る「創・蓄エネルギー時代」が到来すると考えています。エネルギー白書によると、現状の発電コストは太陽光が49円であるのに対し、原発は5〜6円、火力は7〜8円、同じ自然エネルギーの風力は10〜14円、水力は8〜13円となっています。しかし、原発の発電コストには、核廃棄物の処理費用や地域対策費、事故の処理コストは含まれていません。この部分が見直されるとともに、太陽光発電のコストが技術革新により「グリッドパリティ」に到達、つまり既存の商用電力の価格と同等の24円の水準まで下がれば、エネルギーの見直しが起こってくると思います。
平田 そうなると、住宅における太陽光発電の位置付けも大きく変わり、住まいづくりに当たって一層ウエートを占めることになりますね。
井戸 現在、日本でも電力網にIT技術を導入し、情報の通信や制御を行うことで、電力利用を最適化する次世代送電網「スマートグリッド」の構築が検討されつつあります。これまでは電力を送るだけだったものが、太陽光などの自然エネルギーを活用して電力を蓄え、需要に応じて放出することができるようになる仕組みです。「スマートグリッド」の構築のために必要なのが「スマートメーター」です。「スマートメーター」は、電力会社と住宅がリアルタイムで情報を交換することにより、今どのように電気を送り、どう使っているかが分かります。また、消費電力や発電電力を記録するため、 それが証明となって、発電効率の高い太陽光パネルを搭載した中古住宅の価値が上がることも考えられるでしょう。
 トヨタ自動車(株)は2014年以降に発売するすべてのプリウスをプラグインとする方針を打ち出しました。住宅に設置した太陽光パネルで昼に発電した分の余剰電力をプラグイン車に蓄電し、その電力を必要なときに使ったり、通勤後に勤め先に売電するという時代もすぐにやってきます。このように、「創・蓄エネルギー時代」が到来すれば、これまでと全く次元の違う世界に変わっていくということ、 そしてその時代が確実に近付いていることを意識する必要があるわけです。
平田 住宅に搭載した太陽光パネルで創電し、その電力を車で運んで売電する。つまり、住宅が「住まい」としての形だけでなく発電機能を備え、車が移動する蓄電機能として働くことになるのですね。私たち住宅業界も、住宅そのものだけでなく、住まい方や暮らし全体が変わっていくことを認識して、これから取り組んでいくことが重要ですね。

パナソニックの「エネルギーベストミックス」

「エネルギーベストミックス」を提案

ナイス(株)・平田社長 井戸 パナソニックグループでは、省エネ・創エネ・蓄エネ、それらをトータルで制御する「エネルギーマネジメント」のすべての事業を展開しており、 この強みを発揮していきます。
 家庭内の省エネルギー化を自動制御する「HEMS(ヘムス:ホームエナジー・マネジメント・システム)」において中心となるのが、「SEG(セグ:スマート・エナジー・ゲートウェイ)」と呼ばれる次世代分電盤です。太陽光発電システムや家庭用燃料電池、「スマートメーター」など、家庭内のさまざまな機器を「SEG」につないでエネルギーの流れをモニタリングすることで、電気の使用量などをひと目で分かるようにし、「AC/DCハイブリッド配線システム」により交流と直流の電力変換時のエネルギーロスを減らすなど、家庭における「エネルギーベストミックス」を積極的に提案していきます。
 2012年1月1日より、パナソニック、三洋電機、パナソニック電工の3社再編による新体制がスタートします。グループ本社を一つにし、コンシューマー事業、デバイス事業、ソリューション事業の3事業に集約するなかで、パナソニック電工の住建部門は、「環境・エナジーソリューションズ分野」を担当します。まさに、エネルギー事業は今後の最優先商材と位置付ける新たな分野です。当社の新しい事業にぜひ期待していただきたいと思います。
平田 東日本大震災により経営も住まいづくりも大きく変わろうとしています。当社も、太陽光をはじめとする「創・蓄エネルギー時代」 の到来に向けて、 新しい住まいづくりに的確に対応できるよう積極的に取り組んでいきたいと思います。今後ともご指導のほどよろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。

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